2016年10月05日 14:30 〜 16:00 10階ホール
「変わるアメリカ 変わらないアメリカ 米大統領選」⑪会田弘継 青山学院大学教授

会見メモ

近著『トランプ現象とアメリカ保守思想』が話題になっている元共同通信のワシントン支局長。産業構造の急激な変化に取り残された白人中産階級下層の反発がトランプ現象の背後にあると熱く語った。
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司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

「トランプ現象」は先進国の共通課題

金沢 浩明 (日本経済新聞社編集局次長兼編集企画センター長)

講師は元共同通信社のジャーナリストで、現在は米国の思想史研究などを専門とする大学教授。「トランプ現象」の根底にあるものを、単なるポピュリズムでなく、米国の保守思想の転換点として分析した、明快で深みのある会見だった。

 

米国第一など孤立主義的な思想を支持するトランプ現象の背景として、白人中産階級の①経済格差の拡大に対する怒り②「多元文化社会」化への嘆き――の2つの側面を指摘。特に40-50歳代の白人の死亡率が自殺や薬物中毒などで上昇しており、その死亡率の高い地域とトランプ支持率の高い地域が重なっている、との話は衝撃的だった。

 

中産階級が直面するエリートとの格差拡大や経済困難などの社会的変化は、米国だけでなく先進国に共通する問題だ。また、これが人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)の進展などいわゆる「第4次産業革命」によって今後さらに進行するのも確実といえる。

 

「トランプが負けてもトランプ現象は終わらない」「英国のEU離脱も問題の根は同じ」――。グローバル化・自由化など、われわれが進めてきた理想が先進各国の対応策がなければこのままでは頓挫することになる、との問題意識はもっと共有化されるべきだろう。

 

会田教授が分析するまで、米国でもきちんとした「トランプ論」はほとんどなかったという。トランプ氏の暴言が出てくる度に、各メディアは「現象もこれで終わり」と報じ続けてきた。実際に起きている現象にどれだけ真摯に向き合ってきたのか――。会見ではわれわれが逆にそう問いかけられている気がした。


ゲスト / Guest

  • 会田弘継 / Hirotsugu Aida

    日本 / Japan

    青山学院大学教授 / Professor, Aoyama Gakuin University

研究テーマ:変わるアメリカ 変わらないアメリカ

研究会回数:11

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