会見リポート
2016年06月06日
15:30 〜 16:45
10階ホール
「パナマ文書」 ①浅川雅嗣 財務官
会見メモ
「パナマ文書」で注目されるタックスヘイブン、租税回避問題をについて、OECD租税委員会議長として新たな国際課税ルールを昨年10月にまとめた浅川雅嗣財務官が話し、記者の質問に答えた。
司会 実哲也 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
会見リポート
税の国際協調、深化と限界語る
瀬能 繁 (日本経済新聞社編集委員兼論説委員)
通貨マフィアのもう一つの顔は、国際課税のルールメーカーだ。先進国でつくる国際機関、経済協力開発機構(OECD)の租税委員会議長として、浅川雅嗣財務官はタックスヘイブン(租税回避地)を活用した過度な節税への対処方針を語った。
その柱が「BEPS」(Base Erosion and Profit Shifting=税源浸食と利益移転=の略)プロジェクトだ。米スターバックスなどのグローバル企業の「合法だが行き過ぎた租税回避」(浅川氏)への批判が各国で高まった背景がある。
企業の高度な対策で「二重非課税、三重非課税」といった税逃れを防ぐ具体策についてはすでに40を上回る国が合意した。次は6月末に浅川氏が議長を務める京都での会合で、さらに賛同する国を拡大する議論が本格的に始まる。
パナマ文書は租税回避の実態の一端を明らかにしたが、浅川氏は「びっくりしたことはなかったが、BEPSの方向は正しかった、と追い風になった」と振り返った。
たしかに為替や貿易などと異なり、税制は国際協調になじみにくい分野のひとつだ。多国籍企業が生み出した利益から税金をできるだけとりたいと思うのは各国共通。それだけに「非生産的な競争から協調へと、小さいながらも第一歩」へと深化させた、との自負を感じさせた。
一方で「底辺への競争」と称される各国・地域による法人税率の引き下げ競争は続き、租税回避地はしばらく存在し続けるだろう。「全世界一律の税率になればいいが、そうはならない」と、国際協調の限界もまた率直に語った。
BEPS以外にも、各国が非居住者の口座情報を自動的に交換したり、租税回避地に置くペーパー会社の実質的所有者の情報を入手しやすくしたり、といった対策は目白押し。「税の不公平感が助長されるのは放置できない」と強調していた。
ゲスト / Guest
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浅川雅嗣 / Masatsugu Asakawa
財務官 / Vice Minister of Finance for International Affairs
研究テーマ:パナマ文書
研究会回数:1