2016年04月08日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「南海トラフ地震」②木村玲欧 兵庫県立大准教授

会見メモ

防災心理学が専門の木村玲欧兵庫県立大学准教授が防災教育の重要性について話し、記者の質問に答えた。
司会 服部尚 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

今、そこにある危機

今後30年間の発生確率は70%とされる南海トラフ地震。被害は東日本大震災をはるかに上回る可能性が高い。どうするのか。それを考えるのに最適の、地震と防災の専門家の連続会見だった。

 

「4月1日は肝を冷やした。プレート境界で起き、より大きい地震を誘発するタイプだった」と山岡耕春・名古屋大大学院教授は言った。1日正午前、三重県沖の地震は南海トラフ地震が起きると想定されている場所で起きた。「地震の2日前から低周波微動が起きていた。巨大地震にならなかったのは、機が熟していなかったんでしょう」。南海トラフ地震は、もう目の前に迫っているのかもしれない。

 

山岡教授は「1年に2度、1週間ぐらいの期間で低周波微動が起きる。南海トラフ地震はそのとき起きるだろう」と考えている。

 

災害は進化する、といわれる。「関東大震災は火災、阪神大震災は住宅の倒壊、東日本大震災は津波だった。南海トラフ地震は津波に備えていればいいのか」と話し、次は「海抜ゼロメートル地帯の危険性」を挙げた。揺れが大きく、堤防が壊れることによって被害が拡大することを恐れる。

 

木村玲欧・兵庫県立大准教授は自らを「阪神淡路大震災世代」と言う。現在、40代の研究者には、震災の影響で防災関連の研究を始めた人が多いそうだ。

 

「21世紀前半は地震、異常気象などの大災害時代になる。地震などはめったに起きないものではなく、頻繁に発生して、そのたびに命を脅かすものという認識を持つべきだ」と話した。

 

釜石の奇跡に代表されるように、東日本大震災では大人に比べて、小中学生の犠牲者が少なかった。

 

ビデオで紹介された高知市の学校では、緊急地震速報が鳴ると、あっという間に生徒全員が机の下に潜り込んだ。例外は教師だ。大人は「これまで生きてきた」ことから「この次の瞬間も生きている」という「連続性のワナ」に陥るという。

 

東日本大震災後、地元紙の記者らから「繰り返し啓発記事を書いたのに多くの犠牲者を出してしまった」と悔やむ声を聞いた。木村准教授は「助かった人はもっと多い」と伝えることの重要性を強調した。

 

(*このリポートは同研究会の初回、山岡耕春・名古屋大学教授会見との統合版です)

 

東京新聞論説委員
井上 能行


ゲスト / Guest

  • 木村玲欧 / Reo Kimura

    日本 / Japan

    兵庫県立大准教授 / Associate Professor, University of Hyogo

研究テーマ:南海トラフ地震

研究会回数:2

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