2016年01月28日 18:00 〜 19:45 10階ホール
試写会「バナナの逆襲」

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会見リポート

多国籍企業との攻防 ジャーナリスト魂で映画に

明珍 美紀 (毎日新聞社会部)

背筋がひやりとした。巨大企業の妨害やメディア操作に一人のスウェーデン人映画監督が抵抗している。同じことが日本で起きたとき、新聞やテレビで働く私たちはスクラムを組んで闘うことができるのか。他国の出来事では済まされない。

 

主人公は、フレドリック・ゲルテン監督(59・写真下)その人だ。中米ニカラグアのバナナ農園の労働者が有害農薬の使用中止を求め、米国の多国籍企業を相手に訴訟を起こした。その裁判の過程を追い、農薬被害の事実を明らかにしようと製作したドキュメンタリー映画が、企業のおひざ元であるカリフォルニア州のロサンゼルス映画祭のノミネート作に選ばれたことから、上映を阻止しようとする企業側の容赦ない攻撃と米マスメディアへの説得工作が始まる。

 

窮地に立つ監督を救ったのは市民のメール。同社が扱うバナナをサラダに使っていたスウェーデンのハンバーガーショップの姿勢を問いただし、同店は他のバナナに切り替えた。さらに世論が「報道の自由は守られるべきだ」と後押しした。

 

公開前に初来日し、試写の会場に現れたゲルテン監督は「日本の記者たちから質問を受けているが、報道や言論の自由はジャーナリストの権利であり、民主主義には欠かせない」と強調。そして「権力の弾圧を受けた仲間のために何ができるかを考えてほしい」とも。

 

元はテレビや出版業界などで働いていたゲルテン監督は「ニカラグアの実態が米国で暴かれるのを恐れた企業が私に攻撃の矛先を向けた」と分析する。自身に降りかかった出来事を最初から記録し、映画にしてしまう。そのジャーナリスト魂、不屈の精神に目を見張る。


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