2016年01月13日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「3.11から5年」①災害時の危機管理  越野修三 岩手大学地域防災研究センター教授、秋冨慎司 防衛医科大学校講師

会見メモ

震災当時、それぞれ岩手県防災危機管理監、岩手県のDMAT(災害派遣医療チーム)として救援活動を指揮した越野氏、秋冨氏が災害時の危機管理について話し、記者の質問に答えた。
司会 山﨑登 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

危機管理はイメージから 日常から災害を考える文化作りを

久慈 省平 (テレビ朝日災害報道担当部長)

“3.11”から間もなく5年。未曾有の大災害から私たちが学んだものは何だったのか。「災害時の危機管理」をテーマに話した人命救助と災害医療のプロ2人。東日本大震災では岩手県で緊急対応に当たったが、ともに「危機管理はイメージ」と言い切った。過去に大規模災害の現場を踏んできた共通点がある。

 

越野氏は1995年の阪神淡路大震災で、陸上自衛隊第13師団(広島)の作戦部長として神戸市に入り、救助活動の指揮を執った。行政が「神戸では地震が起きないという神話」を信じ、災害に向けた事前準備を十分にしていなかったことを痛感したが、その経験は岩手県防災危機管理監に転じて生かされたという。尽力したのは準備と訓練。東日本大震災での県の対応は十分ではなかったが、「準備していなかったら、もっとひどいことになっていた」と振り返る。

 

「備えあれば憂いなし」「リーダーの決断と実行」を教訓に、地域防災のエキスパート育成を続けている。

 

一方、救急医療にとどまらず、危機対応のスペシャリストである秋冨氏。東日本大震災でのDMAT(災害派遣医療チーム)の救援活動は『ナインデイズ』(河原れん著)として出版され、広く知られている。2005年の福知山線脱線事故の生々しい現場写真やデータを交えながら、トリアージ(識別救急)の難しさなどを冷静かつ情熱的に話す姿から、この事故が氏に与えた影響の大きさを感じた。

 

大混乱の現場では「災害発生時の情報の8割は誤報」であり、互いに頑張る姿を想像できないと救援者同士が疑心暗鬼に陥る危険性を指摘し、「災害の見える化」が必要と説く。

 

越野氏は「津波被害の石碑を作っても、いずれ忘れられる。日常から災害を考える文化を」、秋冨氏は「自分の人生すら想定外。常に最悪の想定を」と訴える。これは、行政や住民だけでなく、マスメディアの災害報道にも言えることだろう。


ゲスト / Guest

  • 越野修三 岩手大学地域防災研究センター教授、秋冨慎司 防衛医科大学校講師 / Shuzo Koshino, Professor, Research Center for Regional Disaster Manegement, Iwate University / Shinji Akitomi, Assistant ProfessorNational Defense Medical College

    日本 / Japan

研究テーマ:3.11から5年

研究会回数:1

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