2016年01月07日 15:00 〜 16:00 9階会見場
ノーベル賞受賞者 梶田隆章 東大宇宙線研究所長 会見

会見メモ

2015年のノーベル物理学賞を受賞した梶田教授が会見し、記者の質問に答えた。
司会 服部尚 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

自然の不思議さ感じて 疑問点、うやむやにしない

深谷 優子 (共同通信科学部)

昨年10月のノーベル賞受賞決定以降、取材や講演依頼が殺到し「ノーベル賞は特別な賞だと改めて感じた。全部変わってしまった」と、世界で最も権威のある賞の受賞者となった実感を話した。先月のストックホルムでの授賞式以降も慌ただしい日々が続くが、会見では終始リラックスした様子だった。

 

研究者になるきっかけについて「本気で研究者になろうと思ったのは大学院に入ってから」と紹介。東大大学院に進学後、小柴昌俊・東大特別栄誉教授の研究室で岐阜県飛騨市の観測装置「カミオカンデ」の建設に携わった。「カミオカンデの準備はそれまで授業で勉強するのとは全く違う世界。一つ一つ確認し積み上げて装置を造っていくのが楽しくてしょうがなかった」と懐かしそうに語った。

 

受賞対象となった「ニュートリノ振動」の成果は、素粒子ニュートリノに質量があることを示した。86年、カミオカンデのデータに「明らかにおかしい」部分を見つけ、1年かけて精査した上で論文を発表したが「世の中の反応は芳しくなかった」。周囲が心配していると感じつつ「何が起こっているか明確にしなければ」との使命感から地道な研究を続けた。その経験を基に「理解できないことをうやむやにしない態度が大事だ」と説く。

 

次世代を担う子供たちには「本だけでなく自然を見てその不思議さを感じてほしい」とメッセージを送る。さらに若い人に「自然科学の研究は非常にやりがいがある。研究をする人生を選択肢として考えてほしい」と呼びかける。一方、若い研究者が定職に就くのが難しいことから博士課程へ進む学生が減っている現状にも触れ「日本の科学界には深刻な問題だ。優秀な人は失業を心配せず研究できるようにしないといけない」とした。さらに今後の課題として「研究者が自由な発想で、科学的好奇心に基づき研究できる風土を保つこと」を挙げた。


ゲスト / Guest

  • 梶田隆章 / Takaaki Kajita

    日本 / Japan

    東大宇宙線研究所長(ノーベル賞受賞者) / Professor, Director, Institute for Ray Research, The University, Nobel laureate in physics

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