2015年12月21日 17:30 〜 18:30 10階ホール
ビロル 国際エネルギー機関(IEA)事務局長 会見

会見メモ

ファティ・ビロルIEA(国際エネルギー機関)事務局長が、11月に発表した2015年版「世界エネルギー展望(WEO)」について話し、記者の質問に答えた。
司会 脇祐三 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
通訳 西村好美 秋山賛(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

「オイル安ショック」の警告

谷口 健 (毎日新聞出版 週刊エコノミスト編集部記者)

不気味な原油安が続いている。2014年秋から始まった原油価格の下落は15年も止まらなかった。中東諸国と米国による供給増加と、爆食・中国の需要減少が原因である。16年は1バレル=20㌦台さえ視野に入り、00年代後半に続いた「原油100㌦時代」は遠い過去のように見えてくる。

 

日本はエネルギーの94%を外国に頼るため、原油安は経済に好影響を与えると言うエコノミストも少なくない。だが、日本記者クラブで12月21日に会見した国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長は、こうした楽観論に懐疑的であった。石油関連企業による投資額が15年に減少し、16年も減る見込みとし、「2年連続の投資減少はここ30年間で初めてであり、警鐘が鳴っているということだ」と原油安リスクを訴えた。つまり、原油の供給側が投資を減らすことで、16年後半にも盛り返す需要増加に耐え切れず、「価格上昇というサプライズを起こしかねない」と警告した。

 

原油安にとどまらず、鉄鉱石や銅など資源安は、すでに世界経済に影響を及ぼしている。

 

スイスの資源商社大手グレンコア、英資源大手アングロ・アメリカン、欧州の鉄鋼世界最大手アルセロール・ミタルは、15年から経営不振が深刻化している。上場以来初の最終赤字見通しとなった日本の大手飲料会社キリンホールディングス。その主因は資源価格の急落で経済が悪化し、消費低迷が続くブラジルの事業不振だ。

 

経済だけでなく、地政学的な影響も広がる。11、12月には、南米の資源国であるアルゼンチンとベネズエラで野党が大勝した。原油安による国内経済の低迷を打開できなかった。

 

16年の日本経済は、原油安に伴う経済と地政学両面のリスク上昇に振り回されかねない。IEA事務局長が発した警告であらためてそう確認した。


ゲスト / Guest

  • ファティ・ビロル / Fatih BIROL

    国際エネルギー機関 / International Energy Agency (IEA)

    事務局長 / Executive Director

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