2015年08月04日 18:00 〜 19:30 9階会見場
試写会「天皇と軍隊」

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会見リポート

憲法1条と9条の関係が見える

金子 秀敏 (毎日新聞出身)

フランス映画「天皇と軍隊」(渡辺謙一監督)は、天皇制、侵略戦争と敗戦、マッカーサーの占領、自衛隊、再軍備、改憲論議という重いテーマを扱いながら、貴重な記録映像と幅広い関係者のインタビューによって、問題点がわかりやすく構成されている。

 

映画のナレーションは「1条と9条はコインの裏表」と表現した。明治憲法で陸海軍の統帥権を持っていた国家元首たる天皇は、敗戦後、憲法第1条によって「象徴天皇」に変わり、第9条の戦力放棄によって統帥権そのものが消失した。マッカーサー連合国軍最高司令官が日本占領に当たって天皇制を存続させたことと、非武装化とは裏表の関係だった。「戦後レジーム」とは、象徴天皇(1条)と戦争放棄(9条)の一体構造にほかならない。

 

もともとはフランスとドイツで2009年に放映されたテレビ・ドキュメンタリーだったと知って意外だった。当時、欧州ではフランスなどの極右政党台頭が目立っていた。日本も第1次安倍晋三政権下で「戦後レジームからの脱却」が論じられており、日本の右翼思想への関心が高まったのだろうか。日本公開は今年8月が初めてだが、映画のテーマは第2次安倍政権下で、より現実的になった。

 

上映会場にみえた渡辺監督によれば、日本についての知識を持たない欧州の視聴者が対象だったので、戦前の天皇制から現在の天皇制、今後の改憲の動きを「通史」の形式で紹介した。日本を知る基本資料として仏、独、米の図書館がDVDを備えたというが、日本人が見ても、改憲論の根源にさかのぼって頭を整理することは有益だろう。渡辺監督は、9条改憲をすれば必然的に天皇の国家元首化が始まる、と憂慮していた。


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