会見リポート
2015年06月09日
14:00 〜 15:30
10階ホール
対談「戦後70年を語る」村山富市元首相、河野洋平元官房長官
会見リポート
「安保法制撤回を」安倍首相へ強いメッセージ
伊佐治 健 (日本テレビ報道局政治部長)
「どんなことがあっても戦争をやらせちゃいかん、危機があるなら説得して解消するべきだ」と元首相、村山富市氏(右)。91歳。息を継ぐ間も惜しむように語る勢いに圧倒される。安保法制の是非が重く問われる今、部隊派遣の苦悩を知る元官房長官、河野洋平氏の厳かな言葉も胸に刺さる。「政府の意思で派遣した警察官がカンボジアで死んだ。若い未亡人と小さな子どもを見てわれわれの責任はどれくらい重いかとつくづく思った」。ペンを走らせながら、安倍内閣がこの迫力をもって国民を説得していたら、法案審議の流れも違っていたかもしれない、と感じた。
「憲法解釈を一内閣が変えて、戦争ができるような国にという狙いがあるなら許してはいけない」。村山氏は安保法制の撤回を訴え、穏健を貫く立場のエピソードとして、故後藤田正晴氏との対話を紹介した。「蟻の一穴を許すなという話をした。危機に備えて軍備を整えることは、かえって危険を増大するんだ」
揺るぎない語り口に、逆に疑問も湧いてくる。北朝鮮の動向はますます読めず、中国が軍備拡大と海洋進出を続ける今、安保・外交を20年前と同じ土俵で語れるのか。
質疑で疑問をぶつけた。「安倍首相は安保法制を歴史的使命と考えている。それは戦争を知らない世代ゆえの間違いでしょうか」。村山氏は「70年間の平和国家としての歩みは無視できない。暴挙はしてはいけない」と安倍首相を批判したが、現下の脅威に対する見解は聞けなかった。
村山氏に現実は十分に見えているだろうか。一方の安倍首相にも死角はないか。自衛隊任務拡大の先にあるものを見通せているか。
会見の終わりに河野氏は「真実の追求」を記者に求めた。問題解決に向けては、過去の史実と共に現実の直視も欠かせない。国民にも政治家にもありのままを見せることがわれわれの仕事と気を引き締めた。
ゲスト / Guest
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村山富市元首相 / Tomiichi Murayama, former prime minister
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河野洋平元官房長官 / Yohei Kono, former chief cabinet secretary
研究テーマ:戦後70年を語る