会見リポート
2013年11月12日
13:30 〜 15:00
10階ホール
小泉純一郎 元首相 記者会見
会見メモ
会見リポート
「即原発ゼロ」 “勝負師・小泉”いまだ健在
倉重 篤郎 (企画委員 毎日新聞論説室専門編集委員)
やはり役者が違うね、という先輩記者の一言に象徴される会見だった。
壇上から見ると、10階大部屋にぎっしり詰まった400人強の視線の風圧はなかなかのもの。だが、元首相はいささかもひるむことなく、イントロはボソボソと、次第になめらかに、時には笑いを誘い、クライマックスでは両手を振り上げ激情を込め、ご本人の大好きなオーケストラを指揮するごとく80分の公演(講演というよりむしろ)を終えた。
中身はこれまでの原発ゼロ発言の総集編のようなものだったが、トイレのないマンション問題のくだりで声音を高めた。「核廃棄物の最終処分方法は技術的に決着しており、問題は処分場が見つからないことだ」というところまでは原発推進派と認識は一緒だとしたうえで、その先の違いを強調した。すなわち、推進派は処分場のめどを付けることこそ政治の役割で、付けない政治がいけないんだ、と言うが、小泉氏からすると、福島原発事故以前にもできなかったことが以後にできると言う主張の方がよっぽど無責任だ、となる。
小泉会見の重みはその後に出てきた。安倍晋三首相を名指しして「原発ゼロは首相が決断すればできる」「郵政民営化よりはるかに環境がいい」「自民党内ですら本音を探れば(推進派とゼロ派は)半々ぐらい」「結局は首相の判断力と洞察力の問題だ」と半ば挑発的に政策転換を求めた点だ。注目された会見ゆえの突っ込み発言。勝負師・小泉いまだ健在との印象を受けた。もう1点、会場からの「いつからゼロか」の質問になんの躊躇もなく「即ゼロがいい」と答えたのも従来より踏み込んだ。これまた記者会見効果ではなかろうか。安倍首相がこの直言にどうこたえるのか。果たして黙殺できるのか。いずれにせよ、緊張感と集中感が持続した時間帯だった。
ゲスト / Guest
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小泉純一郎 / Junichiro Koizumi
元首相 / Former Prime Minister