2013年08月02日 13:00 〜 14:15 10階ホール
研究会「参院選後の日本 民意をどう読むか」「ネット選挙」西田亮介・立命館大学大学院特別招聘准教授

会見メモ

西田亮介・立命館大学大学院特別招聘准教授が、初めてネット選挙が解禁された今回の参院選について、ツイッターの内容分析の結果やネット選挙の今後の課題などについて話した。

司会 日本記者クラブ企画委員 大信田雅二(テレビ東京)


会見リポート

加速しやすいネット世論 ブレーキ役は?

伊井 忠義 (テレビ朝日政治部)

「若年層の投票率を向上させる」というのは、ネット選挙を導入する際の売り文句だったはずだ。しかし、参院選で解禁されたネット選挙の状況をみて「本当にそうなのか?」と感じた人は多かったのではないか。そんな誰もがうすうす感じていた疑問を西田氏が見事に確信に変えてくれた。


情報社会論を専門にする西田氏は30歳。ネット世代のど真ん中にいるだけに明快だ。「そもそも若年層の政治への関心は薄い。だからこそ、既存のメディアが判断材料を提供することが重要で、ネット選挙が成熟するには新聞・テレビの役割は大きい」と説く。つまり、若年層に向けた判断材料を新聞・テレビは提供できていないという指摘だ。


ネット世論の分析も興味深い。参院選公示日に〝拡散〟も含めて最も多かったツイートは「原発」の約5万5千で、2万件弱の「年金・子育て」の倍以上を記録した。しかし、最初のツイートで「原発」を発信した人が9100人で、「年金・子育て」の7600人との差は大きくない。


発信した人数は変わらなくても拡散した規模で大きな差が出たところに、ネット世論の偏りが見てとれる。


こうしたネット世論について、西田氏が「加速しやすいポピュリズムのブレーキ役」を新聞・テレビに期待していたのが印象的だった。


一番驚いたのは、「IT業界はもうけそこなった」という話だ。民放各局は今回の選挙で各党からのスポット広告を当て込んでいた。だが、思ったほどの出稿はなく、選挙広告の資金はネット業界に流れたのかとばかり思っていた。ところが、公職選挙法の規定が曖昧で、ビジネスチャンスは期待したほど生まれなかったという。


ネット選挙は「べからず集」の公職選挙法の理念と相いれないのは明らかだ。テレビの政治報道の在り方とともに議論の必要性を強く感じた。


ゲスト / Guest

  • 西田亮介 / Ryosuke Nishida

    日本 / Japan

    立命館大学大学院特別招聘准教授 / Associate Professor, Graduate Shool of Core Ethics and Frontier Sciences, Ritsumeikan University

研究テーマ:参院選後の日本 民意をどう読むか

研究会回数:0

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