2013年06月05日 14:30 〜 16:00 10階ホール
シリーズ企画「中国とどうつきあうか」③ 瀬野清水・前重慶総領事

会見メモ

38年間の外交官生活のうち25年間を中国に勤務した、瀬野清水・前重慶総領事が、長期安定的に中国とどうつきあうかについて10のヒントを提示した。「人の嫌がることはしない」「お互いに褒め合う」など人と人との関係を基本に据えることが重要だ、とした。

具体策として、独仏間の和解をすすめた「エリゼ条約」を参考に、首脳会議や青年交流を義務づけることを提案した。

司会 日本記者クラブ企画委員 坂東賢治(毎日新聞)


会見リポート

関係改善へ カギは褒めちぎること?

林 哲平 (毎日新聞外信部)

「中国とどうつきあうか」第3弾は38年間の外交官生活のうち通算25年を中国駐在で過ごした専門家が登場。改革開放前後の中国の変貌をつぶさに観察してきた体験を引きながら、「離婚・別居したくてもできない」隣国と長期安定的につきあうための10の方法論を紹介した。

「互いに褒め合う」=日中双方が褒められることに飢えている▽直接会って話すことが必要▽しっかりとした歴史教育を──。多く語られていることではあるが、外交の最前線に立ち続けてきた人間ならではの含蓄に富んだ内容があった。

戦略的互恵関係を掲げた2008年の日中共同声明を「初めてお互いを褒め合った」画期的な政治文書であると分析。「人敬我一尺、我敬人一丈」(孝経)の言葉を引いて「相手に尊敬されればそれを十倍にして返す=礼」との中国伝統思想を紹介し、「褒めて褒めて褒めちぎることで両国の関係はよくなっていくのではないか」と期待を込めた。

「難しい問題は詰めない。理屈で詰めないのはアジアの知恵だ」との言葉には、元外交官としての長いキャリアがにじんだ。折しもスピーチの2日前(6月3日)には野中広務元自民党幹事長の尖閣諸島に関する日中国交正常化時の「棚上げ合意」発言がニュースとなったばかり。当然、この問題にも質問が及んだ。

瀬野氏は個人的意見として「(棚上げに)暗黙の合意はあったのではないか」とした上で、昨年9月の国有化以降の流れについて「大事なことはこれ以上国有化の問題に触れないこと。かさぶたがしっかり治るまではそっとしておく方がよい」と話した。

日本国内で高まる中国脅威論の背景にあるのは「大国化する隣国の意図が読めない」恐怖感だ。中国を知る人の存在と同時に、彼らの声を伝える報道の役割の大きさも感じたスピーチだった。


ゲスト / Guest

  • 瀬野清水 / Kiyomi Seno

    日本 / Japan

    前重慶総領事 / Former consul general of Chongqing

研究テーマ:中国とどうつきあうか

研究会回数:3

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