2013年05月24日 14:30 〜 16:00 10階ホール
第5回アフリカ開発会議(TICAD V)関連 会見 平野克己 ジェトロ・アジア経済研究所 地域研究センター 上席主任調査研究員

会見メモ

ジェトロ・アジア経済研究所の平野克己・上席主任調査研究員が、「アフリカ経済:成長の構図とアフリカビジネス」と題し、話した。サブサハラ・アフリカは、高騰する原油や鉱物資源価格にリンクした高度成長が2000年初頭から始まっている。そこからのお金が個人消費にまわり、内需主導型の成長を築いている、と。アフリカ大陸は、世界全体の鉱物資源の10%を提供する供給地になっている。中国は突出してこの資源に依存しており、アフリカからの供給がなければ、成長率を維持できない、とも。

司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)

TICAD Vのウェブサイト

http://www.ticad.net/ja/index.html


会見リポート

「資源の呪い」を覆せるか

内野 雅一 (毎日新聞夕刊編集部編集委員)

3年前、初めてアフリカを訪れた。ちょうど南アフリカでサッカーのワールドカップ大会が開かれているとき。乗り継いだヨハネスブルグの空港にはブブゼラの音が響き渡っていた。経済成長はやや鈍化した時期とはいえ、空港の熱気から「元気なアフリカ」が伝わってきた。目的地は、さらに飛行機で約2時間半かかる内陸の小国マラウイ。ある企業の食糧支援を取材するためだった。

世界の最貧国とされるマラウイの農村部では栄養失調の子どもが少なくない。主食はトウモロコシ。その自給自足生活は天候に左右される。食習慣とはいえ、動物性タンパク質摂取のために食するネズミを道路脇で売っているのには驚かされた。HIV感染者が多く、若くして死亡する人は後を絶たないという。

実際に、ある村に食糧を届けたりもした。高成長を続けていても、生活の国内格差また国間格差は大きく、経済成長の恩恵を受けているのはまだ一部のように感じた。初めての経験は衝撃の連続だった。

平野さんの話で印象深かったのは、「アフリカの成長はアフリカ自身がつくったものではない」との指摘である。先進国や中国を中心にした新興国の燃料、鉱物など「資源爆食」がアフリカをクローズアップさせる、いわば他国頼みの経済というわけだ。人々を元気づかせているのは流入するマネーによる個人消費だとか。

消費に浮かれるなかで、生活を底上げする学校を含めたインフラ整備が置き去りにされかねない気がしてならない。マラウイだけでなく、アフリカの多くの国が世界の貧しい国の上位を占める。資源依存がかえって開発を後退させるという「資源の呪い」を覆せるか。「21世紀の課題」と平野さんは強調した。

資源の呪縛が解けたときこそ、アフリカが自力で成長できる日なのだろう。マラウイの風景を思い浮かべながら強く思った。

ゲスト / Guest

  • 平野克己 / Hirano Katsumi

    日本 / Japan

    ジェトロ・アジア経済研究所 地域研究センター 上席主任調査研究員 / Chief Senior Researcher, Area Studies Center, Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization (IDE-JETRO)

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