2012年11月26日 13:00 〜 14:00 10階ホール
グローバー 国連人権理事会特別報告者 記者会見

会見メモ

国連人権理事会特別報告者アナンド・グローバー(インド人弁護士)が11月15日~26日まで来日した。政府関係者、医療従事者などへの調査を終え、東日本大震災後、被災者などに対して“健康を享受する権利”が機能していたかどうかについて中間報告を発表し、記者の質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 杉田弘毅(共同通信)

通訳 長井鞠子(サイマル・インターナショナル)

プレスステートメント(国連広報センターHPより)

http://unic.or.jp/unic/press_release/2869/

国連人権理事会のページ

http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/Pages/HRCIndex.aspx


会見リポート

原発事故 健康被害調査は住民主体で

日野 行介 (毎日新聞社会部)

福島第一原発事故による住民の健康被害は発生するのか? 世界が注視する。だが福島県が昨年5月から実施している県民健康管理調査は順調に進んでいない。

全県民に事故後4カ月間の行動記録を提出させ、外部被ばくを推定する基本調査の回答率はわずか23%(10月末時点)にとどまる。一方、住民が最も不安を感じている内部被ばくへの対応は消極的だ。

県民健康管理調査に助言する検討委員会には、座長の山下俊一・県立医大副学長ら事故直後に安全を強調していた専門家が多い。住民は当初から「健康被害を存在しないことにする目的では」と疑心を抱いていた。検討委が「秘密会」を開き、意見の調整や議論の範囲をあらかじめ決めていた実態を暴いた弊紙の報道は
住民の疑心を裏付け、県や検討委員への不信感を深める形になった。

グローバーさんは「プロセスが秘密裏に開かれたかはコメントする立場にない」と直接的な批判は避けた。率直に言って物足りなさも感じた。だが「意思決定のプロセスには地域住民の関与が必要だ」と繰り返す姿からは、被災地に渦巻く不信感を正面から受け止めた「重み」が伝わってきた。激しい批判が伝われば、国や県が態度を硬化させてしまうと懸念したのかもしれない。

グローバーさんは「専門家は物事の一端しか分からない」とも語った。地域住民が主体的に関与することでプロセスの透明化が進み、住民の不安に沿った調査にもなる。今こそ、「想定外」の言葉に象徴される震災と原発事故が残した大事な教訓を生かすべきところなのだ。

健康被害の調査はこれから数十年を要する。これからも教訓を忘れず、専門家に任せることなく一人一人が主体的に関わる重要性を再認識させてくれた。

ゲスト / Guest

  • アナンド・グローバー / Anand Grover

    国連人権理事会特別報告者 / Special Rapporteur on the right of everyone to the enjoyment of the highest attainable standard of physical and mental health

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