2012年10月24日 14:00 〜 15:15 10階ホール
著者と語る『必要か、リニア新幹線』(岩波書店)橋山禮治郎・千葉商科大学大学院客員教授

会見メモ

著者の橋山禮治郎・千葉商科大学大学院客員教授(公共政策)は、JR東海がすすめるリニア新幹線について、採算性や安全性などの観点から疑義を呈し、記者の質問に答えた。

司会 村田泰夫 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

リニア新幹線、情報示し再検討を

村田 泰夫 (企画委員 朝日新聞出身)

夢の超特急か、世紀の愚策か。JR東海が東京─大阪間で建設しようとしているリニア中央新幹線に疑問を投げかけた『必要か、リニア新幹線』(岩波書店)の著者、橋山氏を招いての会見だった。


公共事業など巨大プロジェクトの着手にあたっては、①需要があるのか採算がとれるのかという経済性、②安全性などの技術的信頼性、③自然環境や地域社会を壊さないといった環境適応性の3つの条件をクリアしなければ成功しないと、橋山氏は強調する。


リニア計画には、9兆円という投資額に見合う需要が見込めないこと、電磁波の遮断、非常時の避難路の確保が難しいこと、膨大な電力を消費することなど、3条件のいずれも満たさない。やはりリニア計画を進めようとしたドイツが事前評価の結果、途中で計画を中止した事例を挙げるなど、世界の巨大プロジェクトの成功、失敗例をひきながらの橋山氏の話には説得力があった。


開通してから半世紀たった東海道新幹線の老朽化、地震対策を急がなければならない事情に理解を示しながらも、それがリニア計画に直結する理由がわからない、という。いまJR東海が取り組むべきことは、東海道新幹線の抜本的な耐震工事であり、よしんばバイパスが必要だとしても、技術や安全性、電力消費面で問題の多いリニア方式に執着するのではなく、信頼性の確立している新幹線方式の方がいいと提案する。


JR東海や政府は正しい情報をきちんと出して説明すべきで、ドイツのように、今からでも再評価、再検討する場を設けてはどうかという。


需要がある「はず」だとして事業に着手し、見込み違いだとわかっても、やる「しかない」と突き進み、失敗した巨大プロジェクトの事例は、世界にたくさんある。



ゲスト / Guest

  • 橋山禮治郎 / Reijirou Hashiyama

    日本 / Japan

    千葉商科大学大学院客員教授 / Guest professor of Chiba University of Commerce

研究テーマ:『必要か、リニア新幹線』(岩波書店)

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