2012年05月15日 10:30 〜 11:45 10階ホール
米海軍分析センター・上級研究員を囲む会

会見メモ

退役海軍少将で、米太平洋軍司令部の戦略計画・政策部長、国防総省東アジア政策部長、国立戦争大学司令官などを務めたマクデビット氏が、最近の中国の海軍増強を踏まえた米国の対アジア・太平洋地域の海洋安全保障政策について話し、記者の質問に答えた。


司会 日本記者クラブ企画委員 坂東賢治(毎日新聞)

通訳 澄田美都子(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

中国海軍力膨張 海の安保環境を警戒

飯田 和郎 (毎日新聞外信部長)

米海軍に34年間在籍し、退役後は中国の海洋戦略を専門にしてきたマクデビット氏の登壇は、時機を得たものだった。15日当日が沖縄の本土復帰40年だったことに加え、その2日前の日中首脳会談では、日中双方が尖閣諸島を巡り、互いをけん制しあったばかり。「外洋へせり出す」中国の動きは、この地域全体が大きな関心を持つテーマでもある。


北朝鮮が近く3回目の核実験を強行するとの観測が出るなか、私たち日本のマスコミはそちらへ目を奪われがちだ。だが、「北東アジアで未解決の安全保障は北朝鮮以外では全て海洋問題」という指摘は、日本を取り巻く安保環境のもう一つの現実を言い当てる。


氏は「日本と韓国の海の安保の環境は悪化している」と分析する。その理由として「中国の海軍力膨張」を挙げ、「米国の脅威ではないものの、米国の利益への脅威であり、日本の利益や地域の安定を損なう」と警鐘を鳴らした。


米国の対北東アジア戦略、対太平洋戦略の要として、統合作戦戦略「エア・シー・バトル」を挙げた。空軍力と海軍力が一体となった運用で、米軍の介入を拒む接近拒否行動に対抗する。事実上、中国を念頭に置いた作戦だ。その実践のためにも在沖縄駐留米軍を「今も中核的な存在」と表現した。


もっとも、その視点は過度に中国脅威論をあおるものではない。特に共産党大会を控え、権力の移行期にある中国は「米中衝突を望んではいない。中国は今、内政に集中したいはず」とも語る。中国人民解放軍の海洋戦略は見えにくく、国防費の毎年の大幅増と合わせ、中国の軍事力への不信は根強い。だが、マクデビット氏の冷静な分析こそ、「中国との付き合い方」についてヒントを与えてくれたような気がする。



ゲスト / Guest

  • マイケル・マクデビット / Michael McDevitt

    アメリカ / USA

    米海軍分析センター上級研究員 / Senior Fellow, Center for Naval Analysis

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