2012年04月12日 15:00 〜 16:30 宴会場(9階)
著者と語る『公文書をつかう 公文書管理制度と歴史研究』 瀬畑源 一橋大学大学院特任講師

会見メモ

司会 日本記者クラブ企画委員 瀬口晴義(東京新聞)
著者の瀬畑源(せばた・はじめ)一橋大学大学院特任講師が公文書管理制度の歴史的変遷や現行法の課題について話しました。

使用したレジュメ
http://www.jnpc.or.jp/files/2012/04/31fb088e05309af7f67780a0c82c2410.pdf

瀬畑さんのブログ
http://h-sebata.blog.so-net.ne.jp/


会見リポート

議事録作成は民主主義運用のコスト

臺 宏士 (毎日新聞社会部)

原子力災害対策本部など東日本大震災関連の政府の10の会議で、議事録が未作成だったことが、今年1月に政治問題化した。直接のきっかけは、マスメディアが大きく取り上げたことだが一部の識者や市民グループでは既に問題視されており、その一人が瀬畑源氏だ。


昨年12月以降、毎日新聞でも未作成問題を報じてきたが、公文書管理法(11年4月施行)に関する瀬畑氏の著書や06年から始めたブログでの論考は参考になった。


公文書管理法は公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」とし「現在及び将来の国民に説明する責務」を目的に掲げたが、議事録が未作成のままだったのはなぜなのか。


瀬畑氏は「明治憲法下の官吏の責任は天皇に対してであって国民ではない。(官僚らは)自分たちに必要な人事記録など決まった結果は残すが、(意思決定までの)過程は残しておく必要がなく文書は捨てられていった」と指摘する。「しかし、戦後も変わらなかった。米国は天皇と官僚制を残した間接統治を行ったため、憲法は変わっても行政法の体系は残り、国民に対する責任意識は希薄なままだった。さらに補強したのが自民党の長期政権。公文書は与党と官僚が独占していた」


本来この転機となるのが情報公開法のはずだったが、01年4月の施行を前に各省庁が大量廃棄を行った疑いが濃いという。戦後の象徴天皇制の研究者である瀬畑氏も宮内庁などに情報公開請求したが、不存在の壁にぶつかる。「明治の官僚と同じだ。法律、政策の過程を知りたかったが残っていなかった」と批判する。「議事録未作成は、日々の記録管理の在り方に問題があったからだ。必要な人員を配置することは民主主義を運営する必要なコストだ。そう考えないと同じことが起こる」。瀬畑氏はそう強調した。



ゲスト / Guest

  • 瀬畑源 / Hajime Sebata

    一橋大学大学院特任講師

研究テーマ:著者と語る『公文書をつかう 公文書管理制度と歴史研究』

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