2012年04月03日 15:00 〜 16:30 宴会場(9階)
シリーズ企画「3.11大震災」 エネルギー論 石井彰(エネルギー・環境問題研究所代表)

会見メモ

司会 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)


会見リポート

エネルギー専門家の世界常識

今井 伸 (毎日新聞出身)

石井彰さんは、2月に本シリーズの講演に登場した伊東光晴さんが推薦している『エネルギー論争の盲点』の著者である。台風並みの爆弾低気圧が東京に接近する中での講演だった。


冒頭、明治時代に撮影された安芸の宮島や箱根の観光写真を示し、背景の山や森が丸裸に近いことを指摘した。石炭の利用により、薪を燃やさずに済むようになって、現在の植生が復活したと説明した。欧州でも同じ森林の破壊・再生プロセスが起きたという。


産業革命以前に比べ、世界人口は10倍、エネルギー使用は40倍に増えた。産業革命に

よって多くのものを大量に安価に作れるようになった。上下水道等の公衆衛生インフラが整備され、都市居住が増え、平均寿命は2倍に伸びた。ワットの蒸気機関ではなく、それを動かす石炭の使用開始こそが重要だった。現代文明の本質はエネルギーの大量使用である。


原発代替として脚光を浴びる太陽光発電の効率は薪炭・牛馬の2倍程度にすぎない。六本木ヒルズにある天然ガス燃料の自家用発電機とジャンボジェットの1基のエンジンの出力は同じ4万㌔㍗。太陽光発電だと、成田空港1期工事敷地の広さが必要で、その下の地面は草1本生えない。


「原発は放射能汚染という環境リスクを軽視し、再生可能エネは環境破壊リスクを軽視している」とした。どうすれば解決できるか。まず石炭・石油などCO2を大量に排出する燃料からガスに転換する。そして六本木ヒルズのように発電の排熱を空調や温水に利用するガスコージェネを増やす。原発にしろ再生可能エネにしろ、ひとつだけでエネルギー問題を解決するという考え自体が間違い。日本の課題は、世界一高い天然ガス輸入価格を引き下げることだ。


石井さんの主張は、ユニークに聞こえるかもしれないが、「エネルギー専門家として、世界の常識を話しているだけ」とさらり。日本の論調がナイーブに過ぎるのかも。



ゲスト / Guest

  • 石井彰 / Akira Ishii

    エネルギー・環境問題研究所代表

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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