2012年03月16日 12:00 〜 12:45 10階ホール
ラミー WTO事務局長 記者会見

会見メモ

司会 泉宏(日本記者クラブ企画委員)
同時通訳 澄田美都子、渡辺奈緒子(サイマル・インターナショナル)


WTOのホームページ

http://www.wto.org/


会見リポート

FTA時代 多国間協議は正念場

井出 晋平 (毎日新聞外信部)

「紛争解決システムは、WTOの重要な機能のひとつだ。解決までのスピードも早く、効率的だ」。WTOのラミー事務局長は会見で、WTOの紛争解決機能を何度もアピールした。会見の数日前、中国のレアアース(希土類)輸出規制をめぐって米国、欧、日本が共同で提訴に向けた協議を中国に申し込んだというニュースが伝わったばかり。質疑応答ではWTOの姿勢について関心が集まった。ラミー氏は、「事務局長として中立の立場を守らなければならない」として、「中国はWTO加盟時に同意したルールについて義務を負うが、ルールについての解釈が分かれている」と話すにとどめた。


多角的貿易交渉のドーハ・ラウンドは10年にわたる交渉の末、参加国の対立を解消できずに昨年12月、「近い将来」の包括合意を断念。多国間の貿易協定への道は遠のいた。一方、世界では2国間や少数国での自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)が拡大。日本も、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加へ向けて交渉を開始するなど、主要国はFTAなどに軸足を移しつつある。その背景には、経済分野で中国やインドなど新興国が力を増してきたことが背景にある。国際的に分業化が進み、加工過程でのモノのやりとり、サービスの輸出など貿易形態も複雑化。利害が複雑に絡み合う多国間交渉より、2国間のFTAなどの方が調整のハードルが低くスピードも速い。ドーハ・ラウンドの合意断念は、そんな潮流の変化を象徴する出来事といえる。


FTAが拡大する現状について問われたラミー氏は、「多国間協定と2国間協定をどう併存させていくかは非常に難しい問題だ」と苦しい胸の内をのぞかせた。これまで多国間協議を主導してきたWTOが、新たな時代にどう対応していくのか。ラミー氏の手腕に期待したい。



ゲスト / Guest

  • パスカル・ラミー / Pascal Lamy

    世界貿易機関 / WTO

    事務局長 / Director General

ページのTOPへ