2012年03月30日 18:00 〜 19:50 10階ホール
試写会「オレンジと太陽」 (英国映画 2010年制作)

申し込み締め切り

会見リポート

“児童移民”の孤独と苦悩

塚田 博康 (東京新聞出身)

「君のママは死んだんだ。だから海の向こうの美しい国へ行くんだよ。

そこでは毎日、太陽が輝き、そして毎朝、オレンジをもいで食べるんだ」


そんな言葉を聞かされて、13万人の小さな子どもたちが、ときには家族と引き離されてオーストラリアやカナダなどへ送られた。


待っていたのは貧しい食事、粗末な衣服、過酷な労働、暴力、性的暴行…。ときには名前まで変えられた。そんな“児童移民”が、1970年まで行われていた。


ジム・ローチの初監督映画は、オーストラリアに送られて成人した児童移民たちの「自分探し」を助けたソーシャルワーカー、マーガレット・ハンフリーズの実話だ。


演じるのはスピルバーグ監督作品「戦火の馬」で農婦を演じたエミリー・ワトソン。児童移民に関わった教会や慈善団体からの攻撃や脅迫にさらされつつ、毅然として難しい身元探しを進める女性を演じる。


数多くの人たちの孤独や苦悩に共感し、自分の家族を顧みる余裕のなさへの自責もあって、次第に心の傷を深めていくあたりの演技は見事だ。


はじめ斜に構えていた孤児の一人のレン(デイヴィッド・ウェナム)が、彼女の真摯な態度に自分も変わっていき、彼女がどうしても行く気になれなかった教会の児童収容施設へ連れ出す。


そこの神父たちは、はじめから終いまで一言も発せず、欠けた茶碗でお茶を出す。彼女のぶつかった壁の厚さを感じさせる描写だ。


ちなみに2009年に豪首相、10年に英首相が“忘れられた子どもたち”に謝罪している。


昨年、米国務省は日本の外国人研修・実習制度に人身売買の要素があると改善を求めた。日本が「オレンジと太陽」の地であってはならない。



ゲスト / Guest

  • 試写会「オレンジと太陽」 (英国映画 2010年制作)

ページのTOPへ