2012年03月07日 15:00 〜 16:30 10階ホール
研究会「TPP」⑧ 「知的財産とTPP」福井健策・弁護士

会見メモ

司会 村田泰夫 日本記者クラブ企画委員


骨董通り法律事務所のホームページ

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会見リポート

TPPは知財の最適ルールか?

堀 晃和 (産経新聞文化部次長)

TPPといえば、農産物などの関税問題に関心が集まりがちだが、交渉分野は金融などの国内ルールにも及ぶ。講師の福井健策弁護士が取り上げたのが知的財産面への影響だ。


米国の要求項目には、主に次のものが考えられるという。一つは、著作権侵害の「非親告罪化」。日本では、刑事罰を問うには著作権者からの告訴が必要だ。しかし、非親告罪が導入されれば、捜査当局の判断だけで摘発できる。海賊版の取り締まりには有利となるだろう。


ただ、懸念もある。非親告罪化は過去にも導入議論があり、「同人誌やパロディーが萎縮し、二次創作文化の危機になる」として見送られたという。影響は表現の問題にとどまらず、企業にも及ぶかもしれない。「会社での資料コピーは、私的複製という例外では許されないと解釈されている。小規模な著作権侵害は日常的に行われている」。つまり、社会には大目に見てもらっている部分がある。著作権者が処罰を望まないのに、捜査当局が摘発することの是非も議論になるだろう。


一方、民事の問題が「法廷損害賠償金の導入」。現在の賠償は実損害分が原則だが、「多くは何百円か何千円。裁判になれば費用倒れを起こす」のが実情という。しかし、米国では裁判所がペナルティー的な賠償金を決められる。1作品最高15万㌦(約1200万円)と高額だ。実際、新聞記事の無断掲載で、日本の裁判では1本当たり900円と判断された賠償額が、米国の裁判所では1万㌦だったケースもあった。


ほかに「著作権の保護期間延長」などがあり、講演からは知財ルールの大幅な変更を求められている状況が浮かび上がる。「我々にとっての知財の最適ルールは何か。TPPは(それを決める上での)最適の乗り物なのか」。福井弁護士の問いかけに、TPPにおける報道の役割を改めて考えさせられた。



ゲスト / Guest

  • 福井健策 / Kensaku FUKUI

    弁護士 / Attorney-at-Law

研究テーマ:TPP

研究会回数:0

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