2012年02月15日 11:00 〜 12:00 10階ホール
ピエール・クレヘンビュール 赤十字国際委員会 事業局長 記者会見 ピエール・クレヘンビュール

会見メモ

司会 会田弘継(日本記者クラブ企画委員 共同通信)


赤十字国際委員会のホームページ

http://www.jrc.or.jp/ICRC/


会見リポート

紛争形態変わっても理念は変わらず

新井 琢也 (共同通信外信部次長)

アンリ・デュナンが始めた赤十字運動の話は子どものころからよく聞かされた。赤い十字のマーク(イスラム圏では月のマークになるが)はそこら中にある。それほど身近に感じながら、実は自分は赤十字のことを何も知らなかったということを実感したのは赤十字国際委員会(ICRC)本部のあるジュネーブに勤務していたころのことだ。ICRCのピエール・クレヘンビュール事業局長の記者会見を聞いて、その時の感覚が久々によみがえった。


武力紛争による被害を受けた世界各地の市民に手を差し伸べる人道支援活動などを手広く展開している団体と知ってはいるが、国連機関や非政府組織(NGO)にも似たような活動をしているところはある。ICRCはそうした団体と何が違うのか、実際にどうやって困難な仕事を可能にしているのかなど関心は尽きない。


クレヘンビュール氏の会見はまさにそうした問いに有益な回答を提供してくれたと思う。氏の話は広範囲にわたった。東日本大震災への見舞いの言葉に始まり、シリアを中心とする中東やアフリカでの活動の現状、ICRCへの日本の拠出金がここ数年で大幅に拡大していることなどだ。


質疑応答を含む全ての発言に貫かれていたのは頑固なまでの、中立性という赤十字運動の根本理念だ。それは政府当局だけでなく、少数派の反体制グループも含むあらゆる当事者との対話を持つ姿勢などに現れる。


「対話のみが受け入れられるためのツールだ」「中立であることを信じてもらうには、私たちが言っていることとやっていることが一致していることを時間をかけて示していくしかない」


「国家対国家」から「国家対非国家」へと紛争の形が大きく変化した現在にあっても、デュナンの精神は変わらない。そのことをあらためて知らされた。


ゲスト / Guest

  • ピエール・クレヘンビュール / PIERRE KRÄHENBÜHL

    赤十字国際委員会 / The International Committee of the Red Cross (ICRC)

    事業局長 / Director of Operations

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