2012年02月16日 14:00 〜 15:30 宴会場(9階)
シリーズ研究会「権力移行期の世界」「エジプト」池内恵 東京大学先端科学技術センター准教授

会見メモ

司会  日本記者クラブ企画委員 脇祐三(日本経済新聞)


東大先端科学技術研究センター 池内恵氏のページ

http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/people/staff-ikeuchi_satoshi.html


会見リポート

「国民統合の度合い」で“春”診断

福島 良典 (毎日新聞外信部副部長)

中東・北アフリカの独裁政権を倒した民主化運動「アラブの春」はこれから、どこに向かうのか──。ムバラク政権崩壊から1年のエジプト訪問を踏まえ、「代議制政治の枠組み内で物事が進む」と読む。


「タンタウィ(軍最高評議会議長)よ、俺たちを殺すことはできても、夢を殺すことはできない」。披露された映像「1年後のタハリール広場」の一コマだ。民政移行プロセスを停滞させた軍政当局に対する若者たちの憤りを物語っていた。


民主化デモの原動力を単なる貧困でなく、中東における政治的理念・枠組みの変化ととらえ、アラブ諸国で「反イスラエルなどを掲げる民族主義の国家運営が機能しなくなった」と分析した論旨は明快だ。


「アラブの春」を巡って日本で取りざたされる「欧米の価値観の押し付け」との言説や、事象すべてを植民地主義やパレスチナ問題との関係で説明しようとする教条主義的な態度を排する姿勢は一貫している。


仏歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏は「識字率が上がり、出生率が下がると近代化が進む」との持論を中東各国にも当てはめた。池内氏は「国民統合の度合い」から〝春の行方〟を診断する。


国民統合が進んでいるエジプト、チュニジアの未来については楽観的だ。エジプトでは1周年デモの不発や議会の発言力拡大から、「国民の多くが平常な社会に戻りたいと思っている」と見る。


国民を代表しない少数派が政権を握るシリアの場合、国民統合が実現していないため、「ある種の内戦的状況は一時的には覚悟しなければならない」という。


中東民主化の過程でイスラム主義が前面に出れば、「欧米が『失敗』の評価を与えるかもしれない」。その時、国際社会の懐の深さが問われることになるのだろう。


ゲスト / Guest

  • 池内恵 / Satoshi IKEUCHI

    日本 / Japan

    東京大学先端科学技術センター准教授 / Asso. Prof., Research Center for Advanced Science and Technology, the University of Tokyo

研究テーマ:シリーズ研究会「権力移行期の世界」

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