2011年06月10日 15:00 〜 16:30 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」 辻元清美 首相補佐官(災害ボランティア担当)、湯浅 誠 内閣府参与

会見メモ

内閣官房震災ボランティア連携室で被災地のボランティア活動に取り組む辻元清美・首相補佐官と湯浅誠・内閣府参与が、震災3カ月を前に、ボランティアの実績と課題について語った。


≪「政府は黒子。ボランティアに行きたい人が行きやすくする。団塊の男よ、立ち上がれ」(辻元清美)≫


辻元さんは、大震災を日本社会のターニングポイントにしたい、と述べ、ボランティア連携室を浜岡原発停止とならぶ菅政権の「特徴」と説明した。被災地に入ったボランティアは38万人を超えた。政府が旗を振るのではなく、行きたい人が行きやすくなるよう、ボランティア団体の車を緊急車両として認めたり、公務員のボランティア休暇日数を7日間に引き上げたり、ボランティア・ツーリズムを呼び掛けるなどの活動を紹介した。さまざまな取り組みを始めたが実現に時間がかかったことを認め「各省庁間の連携も、国・県・市町村の役割分担も機能しなかった。日々、なんでできないか、とジレンマにあった」と悩みを語った。

湯浅さんは、「社会的包摂」の考え方を説明し、自治体間や避難所間、被災者間の「復興格差」に懸念を示した。「気になること」として、避難所に行かず在宅の障害者や高齢者の要援護者の確認が遅れていることや、SOSを出そうとせず孤立する50代男性のリスク、避難して高校に通えないまま中退する恐れ、などを具体的に説明した。


司会 日本記者クラブ企画委員 星 浩 (朝日新聞)


助けあいジャパン(震災ボランティア連携室と民間のプロジェクト)のホームページ

http://tasukeaijapan.jp/

官邸災害対策ページ

http://www.kantei.go.jp/saigai/note3.html#sien-volunteer


会見リポート

“社会的雇用”活用で失業者救済

林 美子 (朝日新聞ジャーナリスト学校主任研究員)

寄付への税制優遇を拡大するNPO法改正案が、衆院を通過した翌日の会見。災害ボランティア担当の辻元氏は「阪神大震災の年がボランティア元年と言われるが、東日本大震災は寄付元年と呼ばれるようにしたい」と意気軒昂だった。菅総理辞任をめぐる政界のあわただしい動きについても、「どういう社会にしたいのかという視点が抜け落ちている」と突き放した。


では、どういう社会を目指すのか。辻元氏は①きずな社会の再生②エネルギー源を分散させた「エネルギーデモクラシー」の実現、の2点を挙げる。ただし、その後の発言は被災地のボランティアセンターと政府との役割分担、経済団体などと連携したボランティア確保策、「ボランティアツーリズム」推進など個別の取り組みに重点が置かれた。これらも重要な情報ではあるが、「目指すべき社会」の内容の掘り下げと具体的な行動計画が待たれる。


湯浅氏が担当する「社会的包摂政策」も英語の直訳で、もっと適切な用語または造語がないものかと思う。ただし提言は具体的だ。たとえば、復興過程で取り残される失業者や中高年が出ないよう、障害者雇用の分野で培った「社会的雇用」のノウハウを活用する。もちろん、その仕事自体をどう作り出すかは、また別の場での議論が必要だろう。


湯浅氏の言及で興味深かったのは、阪神大震災ではホームレスが避難所に入れず、炊き出しを受けられない例があったが、東日本大震災では逆に、野宿者が炊き出しをするスタッフに加わったというエピソードだ。「社会の進歩というものがあるとすれば、こういうことを言うのではないか」との言葉に共感した。


ゲスト / Guest

  • 辻元清美 首相補佐官(災害ボランティア担当)、湯浅 誠 内閣府参与 記者会見 / Kiyomi TSUJIMOTO, Makoto YUASA

    日本 / Japan

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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