2011年04月25日 13:30 〜 14:30 10階ホール
記者会見 オショティメイン国連人口基金事務局長

会見メモ

国連人口基金事務局長に1月、就任したババトゥンデ・オショティメイン事務局長が記者会見し、世界の若者を焦点にした取り組みや震災支援について語った。


≪「日本はODAの約束をできるだけ維持し続けてほしい。(震災後の)大変な時期ではあるが、寛大な国と世界がみるだろう」≫


オショティメイン事務局長は、世界の若者人口が18億人で総人口の3分の1を占めていることを紹介し「人類の歴史でこれほど若者の数が多いのは初めてだ。若者に焦点をあて、人口の問題に取り組みたい。若者に政治への参加や国への責任意識を持ってほしい」と語った。女性の妊娠や出産の健康に関連するリプロダクティブ・ヘルスにも力を入れたいと述べた。

東日本大震災の被災地の女性に向けた支援物資として、スキンケア、下着、サニタリー用品、靴下など必要なのに届きにくい物資を詰めたパッケージを5000袋、NGO「ジョイセフ」を通し支援する、という。日本政府が震災復興予算のため、ODA予算を削減する動きについて聞かれ、日本がコミットメントを維持するよう求めた。

司会 日本記者クラブ企画委員 宮田一雄(産経新聞)


国連人口基金東京事務所のホームページ

http://www.unfpa.or.jp/


会見リポート

若者を糸口にダイナミックに

尾崎美千生 (元毎日新聞人口問題調査会事務局長)

この1月、4代目事務局長に就任。アフリカからの初起用である。


会見で一番強調したのは、世界人口70億人の4分の1を占める10歳から24歳までの若者人口18億人のこと。歴史上初めての、この膨大な若者の動向が次の世界の性格を決めるという。政治や社会から疎外された「怒れる若者」に教育や、雇用、性を含む十分な情報を提供し社会に統合する重要性を訴える。


1969年以来、国連を舞台に「人口爆発」の脅威を世界に認知させた初代事務局長。94年の「カイロ会議」で登場し、次の代も続いた女性事務局長2人の手で推進されてきた、女性の人権を重視する「性と生殖に関する健康と権利」(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)路線。新事務局長からは人口を切り口に教育、環境問題に間口を広げ、リプロ中心のミクロの世界から再び人口問題をダイナミックな開発問題に結びつける野心がみてとれた。


もちろん新事務局長は、2015年までに貧困人口を半減させる国際約束「ミレニアム開発目標」(MDG)の達成、特にリプロに関連する妊産婦死亡率低下への人口基金の役割を力説した。妊娠、出産に伴い1日千人、年間35万8千人の女性が死亡している事実は途上国女性を取りまく劣悪な保健衛生環境を物語る。


だが新事務局長の胸には途上国の膨大な若者の欲求不満に応え、世界の安定化を図ることに国連機関の存在価値を見出し、合わせてアフリカの開発を促進するという二重の戦略が込められているようだ。


「人口大国」ナイジェリアで保健相、HIV/エイズ統制局事務局長を務めた政治手腕は抜群とみた。減り続ける日本のODA(政府開発援助)への関心を問われても「大震災の日本に“日はまたすぐ昇る”。各国は日本の動向を注視しているが、いつ、どれだけ国際貢献をするかは日本自身が決めること」と羽目は外さなかった。


ゲスト / Guest

  • ババトゥンデ・オショティメイン / Babatunde Osotimehin

    UNFPA 国連人口基金 / United Nations Population Fund

    事務局長 / Executive Director

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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