2011年04月12日 14:00 〜 15:00 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」 藤代裕之 ジャーナリスト

会見メモ

シリーズ企画「3.11大震災」で『東日本大震災における、マスメディアとソーシャルメディア』と題して、徳島新聞で記者経験もあるジャーナリストの藤代裕之氏が話した。

この日は朝から余震が続き、会見を始めて7分ごろに1分程度、中断した。


≪「マスメディアは改めてその強さを示した」「ネットとテレビの融合が多く見られた」≫


徳島新聞では社会部記者、NTTレゾナンドでは新しいウェブサービスの構築に関わり、現在はネットでジャーナリズム活動を続ける藤代氏は今回の震災でメディアの果たした役割りについて話した。

「とくに生活情報基盤としての地方紙(河北新報、岩手日報など)の役割りが高かった」「Googleのパーソンファインダーなどこれまで新聞社が担ってきた公的な情報を、ひとつのネット企業が担ったという新しい動きもあった」。例えば、NHKやフジテレビがニコニコ動画で、TBSやラジオ福島がUstreamで放送をネットに提供、またNHKがGoogleの「パーソンファインダー」と連携している点、河北新報が紙面をPDFでネットを使って公開するなど、様々な「タブー」が破られた点に注目。これまでの「自社・自前主義」を超えた柔軟性がみられたことを評価した。もはや「ネットとマスメディアは対立する概念ではない」という。

ただし気になる点として、野村総研のネットユーザー調査において、新聞の報道評価が上がりも下がりもしていない点を挙げた。これが意味するのは、『信頼度がはじめから高い』か、『そもそも新聞が読まれていない』かのどちらかかもしれない」として、これについて新聞は今後調査をする必要ではないかと提案した。

さらに今後の課題として、ジャーナリズムが報道すべきニュースは何かを考えるべきと説いた。生活情報や一次情報などは、被災者か否かという情報の受け手によってニュース価値が変わるのではないかと指摘。被災地はまだまだ震災の影響を報じているが、東京の新聞はすでにどう復興するかを議論する段階になっていることを挙げ「これら地域差によって時間軸がかなりズレている」ことへの危惧を述べた。

ソーシャルメディアの課題としては、まず被災地ではそもそもネットに接続できる環境になく、またできたとしても電池がなく、高齢者にはどうしてもネットリテラシーが足りない点などを挙げた。

質疑応答ではマスメディアの信頼度をあげるためには「顔の見えるメディアになるべき」との持論を展開した。

司会:日本記者クラブ企画委員 瀬川至朗


藤代裕之さんのブログ「ガ島通信」

http://d.hatena.ne.jp/gatonews/


藤代さんがリーダーをつとめる

助けあいジャパンのボランティア情報ステーション

http://www45.atwiki.jp/volunteermatome/


会見リポート

ネットと連携、後戻りできない

平 和博 (朝日新聞編集委員)

東日本大震災で、新旧のメディアはどんな役割を果たしたか。藤代氏はマスメディアと、ツイッターや動画共有サイトなどのソーシャルメディアの連携が「大きな一歩」を踏み出した、と言う。そして、この連携は今後も「進まざるを得ない」と。


震災情報の伝達では、映像のインパクトを伝えたテレビ、生活情報基盤としての新聞、災害に強かったラジオなど、マスメディアはそれぞれの特性による強さを示した。


一方で、ソーシャルメディアも影響力を増した、と藤代氏は見る。津波の様子などを、現場に居合わせた一般の人が携帯電話の録画機能を使って撮影、ニコニコ動画などの動画共有サイトに投稿する。さらに被災地からの情報発信手段としても、個人や自治体、報道機関もツイッター、ブログなどのツールを活用した。


そして「マスメディアはこれまでのネットへの拒否感を、未曽有の事態の中で乗り越えた」と藤代氏。


NHKなどの放送局の映像が動画共有サイトを通じてネットに提供される。グーグルが提供する安否情報確認サービス「パーソンファインダー」に、NHK、朝日新聞、毎日新聞などを含むマスメディアからの情報も提供された。


広告の減少、今回の大震災。もはやマスメディアだけであらゆることをカバーすることは難しく、ネットを通じて「足りないことは助けてもらう」という大きな役割転換を突きつけられていると言う。


藤代氏は、内閣官房と連携し、震災ボランティア情報をネットにつなげる民間プロジェクト「助けあいジャパン ボランティア情報ステーション」に、個人としてかかわる。ソーシャルメディアでは〝顔〟が見えることが信頼につながる。個人が見えにくいマスメディアも、〝顔〟の見える存在に、と提言する。


ゲスト / Guest

  • 藤代裕之 / Hiroyuki FUJISHIRO

    日本 / Japan

    ジャーナリスト / Journalist

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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