2011年04月05日 17:00 〜 18:00 10階ホール
【急告】 シリーズ企画「3.11大震災」 福島県双葉地方町村会 記者会見

会見メモ

福島第一原子力発電所が立地している双葉地方の町長・村長8名(会長=遠藤雄幸・川内村長、副会長=井戸川克隆・双葉町長)と同議長会7名(会長=坂本紀一・広野町議会議長)が、菅総理に緊急要望を提出した後、下記のように記者会見を行いました。増子輝彦参議院議員も同席した。


会見に参加された方はこちら。

http://www.jnpc.or.jp/files/2011/04/20110405hutabatyou.pdf

≪「必ず戻る」≫

町村長のおもな発言。

遠藤雄幸・川内村長「いま、われわれの試練についていえば、とても悔しい。きょう、初めて総理に会えた。東京電力が補償するができないところは国がサポートする、と菅さんから聞くことができた。将来が見通せないが前に進んでいこう。しかし、避難生活は困難をきわめ、不明者の捜索もできないし、遺体がどうなっているのかもわからない。原発に頼らない双葉地方をめざす」

井戸川克隆・双葉町長「小さな町で平穏に過ごしてきたのに、こんなことになった。埼玉県に町を移動し、歴史を作りながら、新たなことに挑戦している。電気供給という国策に貢献し、首都圏の電力の30%をまかなっていると自負してきた。安全であると信頼していた。この(会場の)頭上の電気も供給してきた。東京の大停電がこれからあるかもしれない。一地方ではなく、国民全体で原発をどうするか考える時期がきた」

草野孝・楢葉町長「20キロ圏内で町民はひとり残らず避難している。国策の電源立地で東電と共生しながらやってきたが、踏んだり蹴ったりの地域になってしまった。菅首相には、被ばく防止を国策としてやるよう求めた」

遠藤勝也・富岡町長「第二原発がある。原発は安全という神話を信じ切っていた。町民1万6000人が全員避難している。みな、ほほがこけている。『町長、いつ帰してくれるんだ』といわれ『これ以上悪くならない。必ず帰りましょう』と答えている。第二原発は冷温安定ではあるが、運転再開には世論はおそらく厳しいだろう。ただ、双葉地区には原発就労者が1万人いて生計を頼っている。中長期的に議論しなければならない」

鈴木茂・大熊町副町長「避難所が18か所に分かれてしまった。みな着の身着のままで避難している。貴重品をとりに帰りたい。一回、うちに帰してほしい」

馬場有・浪江町長「危険区域に入って不明者を捜索したい。遺体の安置もしなければならない。10キロ圏内の放射線情報を開示してほしい。この放送を聞いている町民のみなさん、生き抜いて一日も早く帰りましょう。東電から2000万円の見舞金の提示があったが、お断りした。謝罪もしないで見舞金という話はない。町民ひとりひとりがもらうものだろう。財産を全部パーにしたんです。。金額は十分ではない。役場は避難所の世話で精いっぱいなので、東電にはマンパワーを出してくれと要請したが、出なかった」

山田基星・広野町長「復旧作業には絶対的な支援をお願いしたい。それだけです」

松本允秀・葛尾村長「地震・津波の被害はなく、ほかの被災者200人を受け入れていた。原発事故でみな避難している。温かく受け入れてもらったが、生活は大変だ。一日も早く村に帰りたい」

司会 日本記者クラブ企画委員 西川孝純(共同通信社)


会見リポート

「必ず戻る!」の信念で

西川 孝純 (企画委員 共同通信特別編集委員)

福島第1原発事故は、国際評価尺度で最悪のチェルノブイリ事故と並ぶ「レベル7」になった。同原発が立地し、住民の大半が避難している福島県双葉地方8町村長の会見は苦渋に満ちたものだった。


会見に先立ち、メンバーを代表して川内村の遠藤雄幸村長が記した揮ごうは「必ず戻る!」だった。原発と共生してきた町村と住民は今、散り散りになっているが、この信念が1日も早く実ることを祈るばかりだ。


一行は事故の早期収束と被害に対する国家補償などを菅直人首相に要望した後、会見に臨んだ。その訴えは「町民は避難先で、ほおがこけ、体全体が小さくなっている。『町長、いつ返してくれるんだ』と言うばかり」(遠藤勝也富岡町長)など切実なものだった。


町役場ごと埼玉県に移った双葉町の井戸川克隆町長は「小さく平穏な町が世界的なニュースの発信源になってしまい残念」と語った。「フクシマ」は深刻な原発事故としてチェルノブイリやスリーマイルアイランドと同様に世界に広まったが、国内外の風評被害は何としても防がなければならない。


各町村とも電源3法に基づく交付金でこれまで財政が支えられ、住民の雇用が確保されてきた。だから事故には複雑な気持ちだろうが、浪江町の馬場有町長は「原発には裏切られたという思いだ」と言い切った。


日本の原発・エネルギー政策は転換を迫られる。原発と共存共栄を図ってきた立地自治体住民の安全を確保し、未来図を描くのは政府の責任である。復興構想会議の骨太の議論を期待したい。



ゲスト / Guest

  • 福島県双葉地方町村会

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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