2011年02月28日 15:00 〜 16:00 10階ホール
松本正之 NHK会長

会見メモ

1月に就任したばかりの松本正之・日本放送協会会長が記者会見し、NHKの経営やデジタル化などについて語った。

≪「デジタル化は鉄道のダイヤ改正とよく似ている。スケジュール管理は可能だが、デジタル化は何が起こるかすべてが見えない難しさがある」≫

1967年、旧国鉄に入社しJR東海の社長を経て、1月まで副会長を務めていた松本氏は、鉄道の仕事と比べながらNHK経営の抱負を語った。NHKの1ヶ月間の印象として、「特殊法人の国鉄に似ている。放送法の規定で公共の福祉がうたわれている。予算も国会の承認を受ける。制約の中、技術革新や環境変化への対応が遅れ、時代に取り残されないようにしなければならない」と述べた。また「鉄道の場合、最も重要なのは安全だが、NHKの場合は番組の質の高さや公平公正さだろう」と比較した。NHKの原点は豊かで良い番組を作ることであり「いいところから強化したい」「NHKらしさは番組の蓄積の延長線上にある」と述べた。7月に迫った地デジ全面移行について、送信側のハード構築は99%まで進み、受信側はビル陰や集合住宅、一戸建てで200万世帯がまだ未対応だ、と報告。「(デジタル化の)対象がすべて見えているか。見えたところはどういう手を打つか」と課題をあげた。

司会 日本記者クラブ企画委員長 吉田慎一(朝日新聞)


NHKのホームページ

http://www.nhk.or.jp/


会見リポート

夏以降、大胆な松本カラーか

秋山 衆一 (共同通信文化部)

JR東海副会長から転じて、1月25日、NHK会長に就任した。テレビの完全デジタル化が目前に迫り、放送と通信の融合が叫ばれるメディア激変期。会見で、公共放送が時代の変化に応じた役割を果たせるように取り組んでいく姿勢を強調した。


「国鉄分割民営化に際しては雇用対策、JR東海では新幹線事業、人事、総務を手掛け、社長、副会長を務めた」と自己紹介。放送界に飛び込んで1カ月の感想として「公共性を最重視し、不特定多数に質の高いサービスを提供する点は鉄道と同じと感じる」と語った。


7月24日の完全デジタル化に向けて「集合住宅、ビル陰などで未対応の世帯に対し、PR活動をさらにきめ細かく取り組む」と述べた。番組のインターネット同時配信サービスについては2月に総務省に認可申請したラジオに続き、テレビについても検討していく意向を表明した。


NHKは夏以降、2012年度からの次期経営計画の詰めの作業に入る。「受信料収入の10%還元」をどう盛り込むか、そもそも少子高齢化が進み、デバイスも通信手段も進化する中、現在の受信料制度のままで良いのか、課題は多い。


ただ、テレビのネット配信も含め「経営計画の検討過程で、現在の放送法の下では取り組めないサービスも出てくるかもしれない」と語り、必要と判断すれば、法改正を迫っていく構えまで見せた。


NHKについては「政府の許認可などある点が国鉄に似ている。こうした組織はいろんな制約があって、変化への対応が遅れることもある」と、シビアに組織の特徴を指摘。国鉄、JR東海時代、難題を解決した業績から見て、かなり大胆な決断を下し、実行していく可能性が高い。夏以降、大胆な松本カラーがにじみ出るに違いない。


ゲスト / Guest

  • 松本正之 / Masayuki MATSUMOTO

    日本 / Japan

    NHK会長 / President NHK

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