2010年12月16日 15:00 〜 16:30 宴会場(9階)
坂中英徳・移民政策研究所長

会見メモ

日本の人口危機を救うために1000万人の移民受け入れを提唱している坂中英徳・移民政策研究所長が研究会「日本型移民国家宣言」で移民政策について語り、質問に答えた。


坂中氏は日本の人口が現在の1億2800万人から50年後には9000万人に落ち込む人口激減時代に突入し、日本人だけでは日本社会は維持できないという危機感を示した。移民を積極的に受け入れることで、日本も世界も発展すると主張した。受け入れた外国人を有能な人材に育てる教育を行い、安定した職場を提供し、永住を認め、国籍を与え、日本人となる構想を示した。50年間で1000万人の移民が日本国民となれば、「10人に1人が移民」という英仏独のような移民国家となり、多民族社会に日本が変わる、という。移民の夢がかなえられる開かれた社会を作り出す必要を強調した。


司会 日本記者クラブ企画委員 泉 宏


移民政策研究所のホームページ

http://www.jipi.or.jp/index.html


会見リポート

日本型移民開国ハードル高し?

左山 政樹 (読売新聞社会保障部次長)

ドバイで開かれた世界経済フォーラム主催の「移民に関する世界会議」(2010年11月29日~12月1日)で、持論を説いてきた。

「日本はこれから先の50年間に1000万人の移民を受け入れるべきだ」というもので、名付けて「日本型移民国家宣言」。金に飽かせて優秀な外国人材を引き抜くのではなく、「新しい日本人」を育成することによって理想的な多民族共同体の国家を作り上げる。そうすれば移民送り出し国との結びつきも強まり、安全保障にも寄与するだろう。例えが適切かどうかはさておき、実に壮大な「ユートピア」計画なのだ。

少子化の進む日本では、何らかの対策を打たない限り、人口の半減する社会が待ち受けている。少しでも人を増やそうとするなら、もはや出生率の引き上げだけでは間に合わず、どうしても国外から人を招き入れることを考えなければならない。1人あたりGDPさえ維持できればよいとの意見もあるが、「日本全体が限界集落(半数以上が65歳以上の地域)みたいになって、年金や医療などの社会保障制度自体が崩壊していく。人口減少の厳しさを甘く見ているのではないか」と批判する。

とはいえ、移民開国へのハードルは高いようにも思われる。異文化に違和感を抱かないか、治安の悪化を招かないか、教育・福祉コストが高くつかないか──。

「移民の多い欧米各国でも、移民との婚姻率が低い。これに対して日本人は宗教にも寛容で、国際結婚も進んでいる。もっと自信を持てばよい」と、いたって楽観的だ。

気がかりな点もある。経済界などでは安価な労働力の輸入と受け止める傾向もうかがえる。医療・介護分野では、EPA(経済連携協定)に基づく受け入れも始まっているが、移民開国の理想からは程遠いことを付言しておきたい。


ゲスト / Guest

  • 坂中英徳 / Hidenori SAKANAKA

    日本 / Japan

    移民政策研究所長 / Executive Director, Japan Immigration Policy Institute

研究テーマ:日本型移民国家宣言

ページのTOPへ