2010年04月19日 00:00 〜 00:00
宇都宮健児・日本弁護士連合会会長

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会見リポート

標的絞りミラクルを

恒次 徹 (読売新聞社会部)

東京などの大弁護士会の主流派が推した候補を破った宇都宮さんは、多重債務者やオウム真理教被害者の救済など、多くの弁護士が敬遠したテーマに早くから取り組んできた。「弱者の側に立つ運動の組織者」という印象が強い宇都宮さんが、業界団体のトップというあまり似合わない役柄を首尾よく演じられるのか。登板したばかりで決めつけてはいけないが、前途は多難と思わざるを得ない。

目下のところ、マスコミが最も関心を寄せているのは、法曹人口の増加を減速させるという「公約」だ。政府が掲げた司法試験合格者「年間3000人」という目標は急激すぎたとしても、宇都宮さんが示したのはその半分。当選が決まった直後の各紙論調は、そこに内向きな姿勢を感じ取り、一様に危惧を表した。

「一斉に同じようなトーンで記事が出たのは一種異様な感じがした」。

会見で宇都宮さんは、こうかみついた。確かに、宇都宮さんが強調した若手弁護士の就職難は、私などが理解しているより深刻なのかもしれないし、今後の推移を注意深く見る必要がある。だが、利用者にとってはまだまだ敷居が高く、分野によっては、目玉が飛び出るような報酬を払わされる弁護士サービスの現状にメスを入れずに、司法修習生への給費制維持を叫んでも世間の理解は得られないだろう。

会見で唯一、「らしさ」を見せたのは、こうした疑問に対して、「僕は勝算があってやってるんじゃない。勝算がなくても駄目なものは駄目と言う」と語気を強めた場面だった。宇都宮さんの掲げる政策には、法律扶助の拡充など、日弁連にとっても悲願で、市民にも歓迎されるものがある。2年の任期はあっという間なので、ここは標的を絞って、グレーゾーン金利の撤廃の時のようなミラクルを起こしてもらいたい。
 

ゲスト / Guest

  • 宇都宮健児 / Kenji UTSUNOMIYA

    日本 / Japan

    日本弁護士連合会会長 / Chairman of Japan Federation of Bar Associations

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