2009年12月11日 00:00 〜 00:00
チャールズ・ルイス・調査報道NPO「センター・フォー・パブリック・インテグリティ」創始者

会見メモ

チャールズ・ルイス・アメリカン大学大学院「調査報道ワークショップ」担当教授(Charles Lewis, Executive Editor, Investigative Reporting Workshop, American University School of Journalism)が12月11日「NPO化するジャーナリズム~米国の非営利報道組織の可能性」のテーマで話し、質問に答­えた。ルイス氏は調査報道で有名な非営利組織「センター・フォー・パブリック・インテグリティCenter for Public Integrity」の創設者。
ルイス氏によると、経営が厳しく調査報道ができなくなった新聞・テレビと、自分たちが取材した調査報道の記事をできるだけ多くの­読者に伝えたい非営利組織との利害が一致し、連携したジャーナリズム活動がアメリカでは広がっている。ジャーナリズムコースで記­者育成と調査報道の両方を行うセンターがすでに10大学に存在する。AP通信やテレビネットワークが調査報道センターと契約し、­コンテンツを報道している。こうした現状を説明し「日本でもできるのではないか」と調査報道の充実をよびかけた。

司会:瀬川至朗企画委員

会見リポート

調査報道も外注の時代

藤 えりか (朝日新聞外交・国際グループ)

もはや新聞は紙面の「場所貸し産業」になってしまうのではないか。そんな危惧をますます覚えた。

米国では既存メディアが体力を失い、記者の失業も増えるにつれ、篤志家の寄付で記者を雇う調査報道NPO(非営利組織)が台頭している。米CBSテレビの看板報道番組「60ミニッツ」の元プロデューサー、チャールズ・ルイス氏はその先駆け的な「センター・フォー・パブリック・インテグリティ」(CPI)を98年に創設。アメリカン大で調査報道ワークショップも率いる。

CPIは約40人のスタッフを擁して計400本以上の調査報道を打ち出し、ベストセラー「大統領を買う」など書籍も17冊出版。財団を中心に資金を集め、年間460万ドルの予算で運営している。スカウトした記者の給料は「元いた会社より上がった人がほとんど」だとか。欧州や豪州でも同様のNPOが生まれている。

新興NPOにとって、耳目を集めやすい既存メディアの紙面や番組は魅力だ。既存メディアも、手間ひまのかかる調査報道が外部から入手できるのは好都合。アメリカン大ワークショップはABCテレビやUSAトゥデーなどと連携、来年にかけて調査報道を打ち出す。「商業メディア自身が取材したように見えるが、クレジットを見ればわかる。調査報道も外注の時代」とルイス氏は語った。

昨年11月末から12月初めにインドで開かれた世界新聞協会の年次大会でも、外注は経営難のカギとして話題に上ったが、あくまで「調査報道など独自性ある記事により注力するためであるべき」とされていた。しかし、現実はその先を行っている。

調査報道の担い手が代わるだけなら、新聞の場所貸し化を気に病む必要はないのかもしれない。日本でも調査報道NPOは「不可能ではない」と、ルイス氏は期待を込めて話していた。ならば形を変えても質の高い報道が生き残るよう、経営難にあってこそ記者は取材の地力を高め続けるしかない。

ゲスト / Guest

  • チャールズ・ルイス / Charles LEWIS

    アメリカ / USA

    調査報道NPO「センター・フォー・パブリック・インテグリティ」創始者 / Founder,NPO“CPI”

研究テーマ:世界の新聞・メディア

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