2005年10月21日 00:00 〜 00:00
小山堅・日本エネルギー経済研究所研究理事「中国経済」5

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会見リポート

進行する“西気東輸”

小池英二郎 (日刊工業新聞第2産業部長)

中国でタリム盆地など西部地区の天然ガスを東部沿岸地域にパイプラインで輸送する「西気東輸」プロジェクトが商用化されている。従来の石炭依存から、石油、天然ガスなどへエネルギーの需給構造を高度化しようというものだ。小山氏によれば天然ガス開発は「環境面からもエネルギー政策の最重要課題になっている」という。

中国は01年からの第10次5カ年計画で様々なエネルギー政策を打ち出している。狙いは「エネルギー供給セキュリティーの強化とエネルギー需給構造の高度化」。90年にはエネルギーの76%を石炭で占めていたが、現在は「石炭60%、石油30%、天然ガス3%」で、10・5計画の政策実現には輸入拡大とともにこの天然ガス開発が大きなカギを握るとされる。

中国の石油消費量は04年は前年比16%増という高い伸びを見せたが、小山氏によると「今年は価格高騰の影響もあり、伸び率は8%を下回りそう」とか。だが「中長期的には5─10%の高い伸びが続く」と見ている。14億の人口を抱える中国が、持続的成長を続けるためには、エネルギーの安定確保は生命線だ。

このため中国は国内開発ばかりでなくロシアや中央アジアとの関係強化などエネルギー安全保障に向け、多面的資源外交を展開、呼応するように石油メジャーや中東諸国も中国に熱い視線を送っている。今年、温家宝首相は自ら組長に就いて「エネルギー指導小組」を立ち上げたが、小山氏はこれを「エネルギー政策強化の表れ」と分析する。

最後に小山氏は「日本市場は世界有数だが伸びでは中国と大きな差があり、日本のプレゼンスは小さくなる」と述べた。中国のしたたかな外交や「西気東輸」の話を聞くにつけ、資源に乏しく、外交下手の日本がますます心配になってきた。



ゲスト / Guest

  • 小山堅 / Ken Koyama

    日本エネルギー経済研究所研究理事 / Senior Research Fellow, The Institute of Energy Economics, Japan

研究テーマ:中国経済

研究会回数:5

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