2005年04月11日 00:00 〜 00:00 10階ホール
田中均・外務審議官「東アジア共同体」3

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会見リポート

戦略的見方のすすめ

大江志伸 (読売新聞論説委員)

「東アジア共同体」という用語が市民権を得たのはこの数年のことだ。「2004年は共同体元年」というキャッチフレーズも目にした。ところが、今年に入り潮目が変わった。共同体構想は空論、時期尚早といった懐疑論が、噴出し始めている。

 

潮目境での田中審議官の登場である。田中さんは共同体作りの5つの課題を提示した。

①共同体をつくる環境の成熟度

②将来的な合理性はあるのか

③必要不可欠な条件は何か

④具体的な方法論は何か

⑤米国との距離をどうとるか

 

田中さんは、成熟した環境は「ない」と断言する一方、「地域協力はそれ自体が平和と繁栄をつくる仕組み」であり、合理性はあると力説した。

 

3番目の不可欠条件では「日中が対峙したままでのコミュニティーづくりはあり得ない」とし、「日中関係の再調整」を訴えた。

 

共同体構築への具体策としては、2国間、地域間で進展する自由貿易協定(FTA)や、6者協議の拡充などソフトな防衛協力の推進を例示し、米国にも利益となる地域協力づくりが肝要と力説した。 田中さんが再三指摘したように、「日中関係の再調整」なしに、東アジア共同体構想は、幻想に終わる。講演前後に起きた反日デモは、再調整の困難さを浮き彫りにしている。

 

田中さんは近く退官し、大学で教べんをとることになるという。今回は外交官としては最後の講演となるのかもしれない。記者クラブ恒例の揮ごうでは「戦略的見方のすすめ」と書き込んでいただいた。

 

田中さんなら、日中再調整にどう取り組むのか。華麗かつ多難な外交官の立場を離れた後も、「戦略的見方」をぜひ、発信していただきたい。


ゲスト / Guest

  • 田中均 / Hitoshi Tanaka

    日本 / Japan

    外務審議官 / Deputy Minister for Foreign Affairs

研究テーマ:東アジア共同体

研究会回数:3

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