2005年04月18日 00:00 〜 00:00
池内恵・国際日本文化研究センター助教授「中東ベーシック」4

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会見リポート

「仮想願望」中東認識から脱却を

脇祐三 (日本経済新聞編集局次長兼国際部長)

中東について語る人の世代交代が必要だ。学界でもメディアの世界でも。アラブ民族主義やマルクス主義に規定された党派的議論では、今の中東を理解できず、現実とズレた認識を広げるばかり……。
池内恵さんは、硬直的な要素を残す「日本の言説空間」への異議を唱え、ある種のイデオロギー批判を込めて現代の中東を論じてきた若手研究者である。今回の研究会でも、日本の中東認識の問題点を指摘することに多くの時間を割いた。

「英語でもアラビア語でもひとつの単語である『民衆』と『人民』を、日本の論者は意図的に使い分ける」「体制側の言説なのに、あたかもアラブ民衆の主張のごとく伝える」「何でもかんでもイスラムという言葉で説明するから、まるでわからない」「日本国内の政治の対立軸の延長だから、中東について語るように見えて実は米国批判をしているだけ」

こうした指摘は、中東専門家の間で過去に波紋を広げてきた。「無礼だ」「生意気だ」と反発する人がいたのも事実。だが、「9・11を契機に、日本人が想像もしなかったようなネガティブな要素もアラブ社会にあると認識されるようになり、自分の主張も徐々に受け入れられるようになった」と池内さんは振り返る。

研究会の最後に池内さんは「日本の新聞の論説には『~と思いたい』という表現が多く、外国語に訳すのは困難」と問題を提起。「受け止めるのが難しい現実について、自分で思い願い、しかもそれで状況を変えられると思っているわけでもない逃げの表現」「現実の情勢認識に、自らの心の平安を保つ願望を投影すべきではない」と語った。

静かな口調ながらも鋭い舌鋒は、中東報道に限らない日本のメディアへの苦言として記憶に残る。

ゲスト / Guest

  • 池内恵 / Satoshi Ikeuchi

    国際日本文化研究センター助教授 / Assistant Professor, International Research Center for Japanese Studies

研究テーマ:中東ベーシック

研究会回数:4

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