2005年03月25日 00:00 〜 00:00
緒方四十郎「著者と語る」

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会見リポート

言論界への期待と励まし

増田れい子 (名誉会員(毎日出身))

『遙かなる昭和─父・緒方竹虎と私』(朝日新聞社刊)の著者緒方四十郎氏(当クラブ特別賛助会員)との語る会はいきなり〝正誤表〟から入った。竹虎氏の愛犬のブラッキーは正しくはプラッキーなど計8カ所間違っていたそうで「でもまだあるかもしれませんのでご指摘を」とアタマを下げ、笑いを誘い出す。

書き上げて有名3社に出版を打診したが断られ、結局朝日に落ち着いた。私は広告で見てタイトルにひかれすぐさま買いに走った。四十郎さんは1927年生まれ、私29年生まれ、あちら御曹司、こちら馬の骨の違いはあれど戦争体験は共通、何しろ緒方貞子さんというブリリアントな存在の夫君(もっとも四十郎さんは40代にしか見えないので私は長らく貞子さんのご子息と見誤っていた。老耄と許されよ)でいらっしゃるからそこはかとなく貞子さんとのことも記されてあるかとときめきを覚えたのである。
記述はある。7、8行ある。事実のみさらりと。四十郎流である。しかしそれは主題の竹虎氏についても同様でその足跡、信念、波瀾の生涯を過剰な表現のひとかけらもなく透明無比に描出して実に心地よい。

心地よさと言えば四十郎さんはいつどこででも誰とでもこの〝心地よさ〟を醸し出せる名人で、語る会の1時間半がまさにそれだった。質問はひきも切らず、「小泉サンをどう思うか」(答:改革なくして成長なしとおっしゃるが成長なくて改革はできないのか)、「貞子さん不在の折の夕食は」(答:外食)など賢問賢答の連続。

その笑いの波間にさりげなく投じられたひと言がある。「父は胸底に言論統制と戦争を防げなかった自責を深くきざんでいた」。いま言論にかかわるものへの期待といたわりと励ましがにじんでいた。

ゲスト / Guest

  • 緒方四十郎 / Shijuro Ogata

研究テーマ:著者と語る

研究会回数:0

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