2016年07月26日 15:00 〜 16:30 9階会見場
著者と語る『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか―メディアの未来戦略』茂木崇 東京工芸大学専任講師

会見メモ

ジェフ・ジャービス氏の著作『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか―メディアの未来戦略』を監修した茂木崇氏が同書について話し、記者の質問に答えた。
司会 橋場義之 日本記者クラブ特別企画委員


会見リポート

「マス」は崩壊した 既存メディアの未来は?

岡田 力 (朝日新聞Journalism編集長)

米国の著名なブロガーで、ニューヨーク市立大学教授のジェフ・ジャービスが著した『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか』(東洋経済新報社)が日本で発売となった。監修に携わった茂木崇さんが本書を解説。「私自身、共感する部分と意見を異にする部分が半々だ。ジャーナリズムの本質論を議論するたたき台にしてほしい」と語った。

 

本書でジャービスは、ジャーナリズムを「広義ではコミュニティーが知識を広げ、整理するのを手助けする仕事」「狭義では何かを主張し、市民の生活に良い影響を与えるために努力すること」と定義する。

 

その上で、「マスは崩壊した」との認識に立ち、「マス広告がなくなる」とする。しかし、記事形式の広告であるネイティブ広告については絶対反対の立場だ。記事の課金についても難しいとし、寄付についても警戒する。「ジャーナリズムはページビュー数などマスメディアの発想で動いているが、今後はコミュニティーの目標達成にどれだけ貢献できたかで計るべきだ」と主張する。

 

茂木さんはジャービスを「公衆に期待するデューイ型」と規定し、自らをリップマン型とする。米国のジャーナリストのウォルター・リップマンはステレオタイプ論にあるように、公衆には期待していなかった。それに反対したのが米国の哲学者ジョン・デューイだ。ジャービスの言うコミュニティーとともに問題を解決していくジャーナリズムはデューイ型だとし、「取材相手と一定の距離を置いて観察し、説明したり、批判を加えたりするジャーナリズムの営みがおろそかになる」と批判した。

 

「既存の報道機関に未来はないと思っている人が多いが、『ニューヨーカー』誌はいまでも部数を伸ばしている」と茂木さんは指摘し、「過渡期だからこそ古典に学び、歴史に学ぶべきではないか」と話した。


ゲスト / Guest

  • 茂木崇 / Takashi Mogi

    日本 / Japan

    東京工芸大学専任講師 / Full-Time Teacher, Tokyo Polytechnic University

研究テーマ:『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか―メディアの未来戦略』

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