会見リポート
2016年03月07日
15:00 〜 16:00
10階ホール
「3.11から5年」⑬ 写真家 野口勝宏氏
会見メモ
東京電力福島第一原発事故の直後から被災地で花の撮影を続けている写真家の野口勝宏氏(郡山市在住)が会見し、記者の質問に答えた。
野口勝宏さんのWEBサイト
司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
会見リポート
被災地に咲く花々の写真が旅客機の機体に
土生 修一 (日本記者クラブ事務局長)
会見の前に、日本記者クラブの9階ラウンジに展示されている野口さんの作品を見た。
白を背景にして四季の草花が上下左右、画面いっぱいに咲き乱れている。写真だが、写実を超えた幻想的な美がこちらに迫ってくる。写実主義の絵が「写真のような絵画」と評されることがあるが、これは「絵画のような写真」だ。
野口さんは福島・郡山市で広告用の写真を撮るカメラマン。震災後、県からの依頼で避難所の記録撮影を依頼された。避難所の住民たちはギリギリの精神状態で、カメラを持った野口さんに拒絶の目を向けた。4歳の子供に「撮るんじゃねえよ」と言われたこともあった。
そんな時、段ボールで花を作って避難所の壁に飾っている人がいた。「紙の花」の周囲に人が集まり、笑顔が広がった。
「本物でなくても花を感じる。私の写真でもやれる」
「花の力」を実感した野口さんは、自宅近くの草花を撮影し、フェイスブックに1年8カ月にわたって花の写真をアップし続けた。印刷した花の写真を避難所に持参すると女性たちの輪ができ、撮影拒否も少なくなった。
作品には、背景を消し花だけが写っている。「花そのものを感じてもらい、花と見る人の記憶をリンクさせたかった」
独特の美を放つ作品は評判となり、郡山の百貨店で写真展が開かれ、さらに野口さんの作品を機体にデザインしたANAの国内便が今年5月から2020年まで就航することが決まっている。
「これまで600種類の花を撮ってきた。広告写真とは違い、自分の写真で社会に貢献できる手ごたえを感じている。これからはアレルギーなどの理由で実物の花が飾れない病院などにも作品を置いてもらいたい」
広告写真で鍛えたインパクトのある「美」を創りだす技術と、東北復興への思いがドッキングして生まれた花々の世界。避難所の一角から日本全国に大きく広がっている。
ゲスト / Guest
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野口勝宏 / Katsuhiro Noguchi
日本 / Japan
写真家 / Photographer
研究テーマ:3.11から5年
研究会回数:13