2013年09月02日 14:00 〜 15:30 10階ホール
エズラ・ヴォーゲル氏を囲む会

会見メモ

ハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル名誉教授が、新著『現代中国の父 鄧小平』の概要を説明した後、尖閣諸島をめぐる日中関係の問題などについて質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 坂東賢治(毎日新聞)


会見リポート

中国との対話 複数のパイプづくりを

当クラブでの会見は『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を発表した1979年以来2度目。今回は『現代中国の父 鄧小平』(邦題、日本経済新聞出版社)の日本語版刊行を機に来日した。同書の中国大陸版は、今年1月の発売後、50万部を売り切り、30万部を増刷したという。鄧小平本の決定版といえる同書は、中国国内のタブーを破り、89年の天安門事件を詳細に描いており、その出版許可は事件の評価に変化か、と話題になった。それについて博士は質疑の中で「中国共産党が事件を見直す条件は徐々に整ってきている」と、近い将来の再評価の可能性を指摘した。


博士は会見時間の半分を鄧小平の波乱の人生と不屈の人物像の紹介に充てた。その中で、中国の繁栄を導いた改革開放路線について、78年末の3中全会での決定に先立つ、日本、シンガポール訪問の意義を強調、79年1月の訪米と併せ、対西側協調で経済建設を推進する路線が固まったとの認識を示した。鄧小平の高等教育重視は有名だが、鄧がモデルにしたのは、戦前の日本のエリート教育だったという。


会見は日本語で行われたが、深い見識に裏打ちされた博士の説明は、説得力に富み、現代中国に関する上質の講義を聴く思いがした。


質疑では時節柄、尖閣諸島問題を含む日中関係を中心に多岐にわたる質問が出たが、博士は懇切丁寧に応答した。博士は日中関係悪化について「中国人は、日本は第2次大戦への反省がないと不信感を持ち、戦後の日本の平和主義を理解していない」とし、歴史問題などでの日本側の対応のまずさを挙げた。尖閣問題の背景にも中国側の対日不信があり、現状では棚上げ論にも中国が応じる可能性はないとし、中国との対話のパイプを複数つくることから始めるよう日本政府に期待を寄せた。


現在83歳の博士は、日中双方の理解者として精力的活動を続けている。


共同通信・産経新聞出身 伊藤 正

ゲスト / Guest

  • エズラ・ヴォーゲル / Ezra Vogel

    アメリカ / USA

    ハーバード大学名誉教授 / Henry Ford II Professor of the Social Sciences Emeritus at Harvard University

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