2013年06月07日 14:00 〜 15:30 10階ホール  
シリーズ企画「中国とどうつきあうか」④ 向田昌幸 元海上保安庁警備救難監

会見メモ

元海上保安庁警備救難監の向田昌幸氏(現・日本水難救済会理事長)が、「海上保安官から見た尖閣問題―手詰まりの日本、その背景と選択肢―」と題して、話した。

警察力の海上保安庁と軍事力の海上自衛隊の連携の必要性がよくいわれる。

海上自衛隊のP3Cによる不審船への哨戒活動の情報が海上保安庁にもたらせるなど、連携はある。

ただし、尖閣諸島について、中国が核心的利益と位置づける中、日本の考え方がはっきりしなければ、シームレスな対応はできないことになる、と。

司会 日本記者クラブ企画委員 倉重篤郎(毎日新聞)

冒頭発言部分の要約版(向田氏作成)

http://www.jnpc.or.jp/files/2013/06/0f7072ee55041ccfdc5c819fe1cb0821.pdf


会見リポート

日本にとっての尖閣 その位置付けは

末続 哲也 (読売新聞国際部)

沖縄県・尖閣諸島沖で2010年9月に起きた中国漁船衝突事件。当時の現場責任者が、海上保安庁の視点から尖閣問題を論じた。強調したのは「約束違反を繰り返してきたのは中国だった」との認識だ。

中国側は1972年の日中国交正常化交渉の中で、日中双方が尖閣諸島の領有権を「棚上げ」すると約束したと主張する。事件で巡視船に体当たりした船長を、日本側が国内法に基づき訴追しようとすると、中国側は「棚上げ」に反すると抗議した。一方、日本政府は領土問題が存在しないとの立場から、「棚上げ」の存在自体を否定している。

だが、結果的に日本は尖閣諸島の現状をほぼ維持してきた。その間、中国は「尖閣奪還に向けた中長期的戦略」を、したたかに進めてきた。

ソ連崩壊直後の92年2月には、尖閣諸島を中国領と定めた中国領海法を公布した。2005年6月に懸案の対ロシア国境を画定させると、08年12月には海洋監視船「海監」2隻を尖閣諸島沖に送り込み、約9時間も日本領海内にとどまらせた。

中国は今や、尖閣諸島を「核心的利益」と位置付け、「海監」などによる尖閣諸島沖の領海侵入などが頻繁に起きる。「中国国内法に基づく主権的権利を日本領域内で行使してくる、ゆゆしき事態」だ。

限られた人員で日本の広大な領海や排他的経済水域(EEZ)を守る海上保安庁の現場は、中国の攻勢に遭い、士気こそ高いが、「有効な手を打てない」という悔しさも漂う。尖閣問題に追われ、救難など他の任務に影響が出かねない。

その際、問われるのは、日本にとっての「尖閣」の位置付けだ。「東シナ海の遠い別世界の話だという感覚が、国民の間に浸透したままではないか」。周辺海域で「静かな警備」を忍耐強く続ける元同僚たちに代わり、重たい「問い」を残した。

ゲスト / Guest

  • 向田昌幸 / Mukaida Masayuki

    日本 / Japan

    元海上保安庁警備救難監 / Former Vice Commandant for Operations, Japan Coast Guard

研究テーマ:シリーズ企画「中国とどうつきあうか」

研究会回数:4

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