2012年12月10日 15:00 〜 16:30 10階ホール
著者と語る『東京プリズン』(河出書房 2012年7月)赤坂真理さん


会見リポート

奥行き深まる「赤坂ワールド」

田上 幹夫 (朝日新聞出身)

年配のジャーナリストたちに「赤坂真理」はいささか刺激の強い存在である。女性の性や心理を繊細に描く作品は同性向け、と思われている。しかし、9年ぶりの新作『東京プリズン』が評価を一変させた。司馬遼太郎賞の受賞などを追い風に、紙価を高めることになった。


その赤坂さんは少し遅れて現れた。居並ぶ多くがオジサンである。どこか場違い、といった面持ちだ。


スリムな、どちらかといえば無表情の主役の口は重い。もう飽きるほど各所で語ったはずの、新作に込めた思いをゆっくりと語り始めた。


わけあって米国の最北端に留学した少女を通して語られる昭和天皇の戦争責任、プリズン(拘置所)化した戦後の日本。戦争の傷を抱きしめて生きてゆく日本人。時代をまたぐ少女の時間軸が歴史性をはらみ、これまでにない骨太の仕上がりとなった。


作中、国にセクシュアリティー(性別)を見いだし、少女が「自分」ではないものと交流する。そんな赤坂文学のモチーフが確認できる。


それにしても天皇の責任に向き合う作業はまことに孤独だったようだ。「世界で1人、と感じた」。そう述懐した。


耐える力はなかなかである。「この本はまだ読んでいないが」と前置きして天皇観を問う鈍感力の達人には、「それを正直に言う勇気に感銘する」と軽い一刺しを入れ、それでも敗戦を機に天皇が「男」から「女」に変容していくさまを丁寧に説いた。


会見後、聞いておくことがあった。


「秀逸な性愛描写を集めた荒川洋治さんの本『ラブシーンの言葉』に自薦するならどこを」。しばし考え、「ヴァイブレータ」のホテルに行く場面、と言った。行きずりの男女の話だが、ことさら合体のない交歓のくだりを挙げたのは、性愛の極致が精神性を強く帯びるものだと示唆したかったのか。


赤坂ワールドは奥行きを深めた。あなどれば粉砕されるかもしれない。


ゲスト / Guest

  • 赤坂真理

    作家

研究テーマ:著者と語る『東京プリズン』(河出書房 2012年7月)

前へ 2019年04月 次へ
31
1
3
6
7
8
13
14
19
20
21
25
27
28
29
30
1
2
3
4
ページのTOPへ