2011年10月24日 17:00 〜 17:45 10階ホール
クリスティアン・ヴルフ 独大統領 記者会見

会見メモ

司会 吉田慎一 日本記者クラブ理事長(朝日新聞)

通訳 桑折千恵子、蔵原順子


駐日ドイツ大使館のホームページ

http://www.tokyo.diplo.de/Vertretung/tokyo/ja/Startseite.html


会見リポート

“ドイツ流”で統合深化に貢献

赤川 省吾 (日本経済新聞経済金融部)

通貨ユーロの将来が危ないのでは、との疑問には「欧州は過去も危機をバネに統合を進めてきた」。苦境に陥った南欧には「支援枠をきちんと広げる」と模範解答した。


欧州債務危機への対応を問いただしても、いやがるそぶりを見せずに、懇切丁寧に説明するいつものスタイルを貫いた。政治的な実権はほとんどないが、「国家元首として尊敬される人物」であることが求められるドイツの大統領は、その役割をそつなく演じきった。


戦後ドイツの経済政策は経済学者オイケンが中心となったフライブルク学派が提唱する「社会的市場経済」に立脚する。市場原理は尊重するが、政府が市場競争を管理し、英米型資本主義とは一線を画す。それが絶対的な価値観となっていることが言葉の端々からにじみ出る。


「銀行が巨額資金で投機に走った」。金融市場への攻撃は緩すぎた規制が混乱に拍車をかけたとの認識の裏返し。投資マネーをあふれさせた低金利政策は「安価なお金をばらまくのはドイツの立場ではない」と切り捨てた。


大統領に就く前はフォルクスワーゲン(VW)の本拠地があるニーダーザクセン州の首相だった。グローバル化には理解があるはずだが大統領としては保守的な立場に回帰せざるを得ない。前大統領のケーラー氏が国際通貨基金(IMF)の元専務理事だったにもかかわらず金融市場を「モンスター(怪物)」と批判したのに重なる。


いまドイツは、自らの経済政策の発想を欧州全域に広げて危機を乗り切ろうと試みる。それには「ドイツ流」を押しつけるだけでなく、17世紀のウエストファーレン条約で確立した国家主権を段階的に手放し、欧州連合(EU)の機能を強化することも欠かせない。それが決断できるのか。「ドイツは責任を担う」。統合深化に向けた公約は重い。


ゲスト / Guest

  • クリスティアン・ヴルフ / Christian Wulff

    ドイツ / Germany

    大統領 / President

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