2011年08月26日 12:00 〜 13:30 10階ホール
昼食会 広瀬弘忠 東京女子大学名誉教授

会見メモ

シリーズ企画「3.11大震災」 記者研修会

記者研修会


司会・代表質問 日本記者クラブ企画委員 神志名泰裕(NHK)


安全安心研究センターのホームページ

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会見リポート

正常性バイアス 取材者も自戒を

 

「人間は避難するのが難しい動物だ」。冒頭、こう切り出した広瀬弘忠・東京女子大名誉教授(災害心理学)の話に引き込まれた。死者・行方不明者2万人以上の東日本大震災を踏まえ、危機に直面した人の心理や行動を解き明かしていく。「津波てんでんこ」(「津波の時は肉親に構わず、各自てんでんばらばらに高台へ逃げろ」という三陸地方のことわざ)は一種のパニック状態だが、広瀬氏は「人は危機に際してパニックを起こさず、むしろ凍り付く」と解説する。人は迫り来る危機を楽観視し続け、最後にどうにもならなくなって思考停止に陥るというのだ。

 

楽観視の傾向を、異常を正常の範囲内と錯覚する「正常性バイアス」という。別の目的を告げて被験者を部屋で待たせ、煙を流し込む実験が興味深かった。驚くほどのんびり構え、部屋を出ようとしない被験者に自分を重ね、心細くなった。

 

94年の福島・飯坂温泉旅館火災の取材を思い出した。大量の放水で深夜いったん鎮火し、1階部分に記者やカメラマンが入った。入社3年目の私も深く考えずその群れに加わり、惨状に夢中でシャッターを切った。しばらくして外へ出た直後、建物に充満した引火性ガスで自分のいた場所が再び爆発炎上し、腰を抜かした。中にいたら助からなかった。幸い、他の記者も無事だった。

 

この経験は正常性バイアスとは直接絡まないかもしれないが、「他社もいるので大丈夫」という楽観があった。86年の豊田商事会長刺殺事件で、現場にいた報道陣が何もできずに批判を浴びたケースなども示唆的だ。災害や事件の現場で大勢の報道陣に混じって取材する際、興奮状態の中で危機への感覚が鈍る。こうした取材者特有の心理を自戒しなければならない。広瀬氏の刺激的な問題提起を受けて、そう痛感した。


毎日新聞社会部 井上 英介

ゲスト / Guest

  • 広瀬弘忠 / Hirotada HiROSE

    日本 / Japan

    東京女子大学名誉教授 / Emeritus Professor, Tokyo Woman's Christian University

    研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」 記者研修会

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