2009年11月20日 00:00 〜 00:00
アントニオ・グテレス・国連難民高等弁務官

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会見リポート

日本は平和構築者に

二村 伸 (NHK解説主幹)

紛争や気候変動による難民の増加と、治安の悪化による人道支援活動の危機。高等弁務官に就任してまもない2005年以来のクラブでの会見で、グテレス氏は難民問題の深刻さを訴え、より多くの難民を受け入れるための制度改革を求めると同時に、「紛争にかかわっていない日本こそが平和の構築者になれる」と期待を表明した。

世界の難民の3分の2は、アフガニスタンやイラク、パレスチナ、それにアフリカといった「紛争の弧」に集中し、アフガニスタンでは治安の悪化によって人道支援活動が危機にさらされている。地球温暖化による干ばつや洪水、食料不足も人々の強制移住や紛争拡大を招き、国内避難民や難民を生み出している。

こうした危機の予防と解決のために日本の果たすべき役割は大きい。日本は国連難民高等弁務官事務所への第2の資金拠出国だが、難民の受け入れ数は諸外国と比べ極端に少ない。来年からタイに逃れたミャンマー難民を3年間で90人受け入れる準備を進めており、アジア初のこのプロジェクトが成功すれば、日本への評価が高まるだろうとグテレス氏は言う。ミャンマー難民の再定住は、日本にとって画期的なことだが国際社会はそれだけでは満足しないだろう。難民認定制度を国際水準に近づけ、より多くの難民を受け入れて社会全体でサポートしていく環境を整えることが求められている。

ポルトガル首相を6年務め、今年還暦を迎えたグテレス氏は情熱家で現場を大事にする人物である。緊縮財政で職員数の削減を余儀なくされるなど厳しい状況が続く中で、世界各地で難民支援を続ける職員の身を案じながら、人道支援と平和の構築への貢献を精力的に訴えている。
 


ゲスト / Guest

  • アントニオ・グテレス / Antonio GUTERRES

    国際連合 / UN

    国連難民高等弁務官 / United Nations High Commissioner for Refugees

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