2014年11月13日 13:30 〜 15:00 宴会場(9階)  
髙木勇樹 元農林水産事務次官「戦後70年 語る・問う」④

会見メモ

元農林水産事務次官の髙木勇樹さんが「市場開放と戦後農政」のテーマで話し、農協改革や農地問題などの質問に答えた。

司会 村田泰夫 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

戦後農政の根幹は「トライアングル」

村田 泰夫 (企画委員 朝日新聞出身)

戦後わが国農業は、世界経済のグローバル化に伴い、国内の農産物市場の開放を求められ続けてきた。

 

ガットやWTO(世界貿易機関)での農業交渉であり、2国・地域間のFTA(自由貿易協定)である。今日焦点となっているTPP(環太平洋経済連携協定)も、最大の懸案は農産物市場の開放である。

 

国際競争力のないまま市場を開放すれば、国内農業は壊滅的な打撃を受ける。市場開放は避けられないが、といって国内農業や地域社会を崩壊させるわけにはいかない。農政のかじ取りが問われ続けてきたゆえんである。

 

農政改革の論陣を張る髙木氏は、戦後農政の根幹は、食糧管理法、農業協同組合法、農地法の3つにあるという。このトライアングルが戦後農業の発展に大きく寄与した半面、今日では農業の成長産業化の足かせになってきていると指摘する。

 

米、麦などの主食の生産、流通を規制する食管法は、食料の安定供給に大きな役割を果たした。ウルグアイラウンド交渉の妥結を機に食管法は廃止されたが、いまなお「国が面倒みてくれるはず」という依存症が農業界には残っていて、農業の自律的発展の障害になっている。

 

農地解放で誕生した自作農がやる気を出して農業生産を拡大させたが、今日では農地法が農地の担い手への集積を妨げている。農業者の組織である農協が零細な自作農を守ってきたが、今日では非農業者の組合員の方が多くなって、農業者のための組織でなくなってしまった。

 

トライアングルに改革のメスが入ろうとしている。食管法は廃止され、あとは生産調整の廃止をいかにスムーズに実施するかが課題だ。農地法は改正され、リース(賃貸借)方式なら企業でも農業に参入できることになった。手つかずだった農協の改革にやっと政府は取り組み始めた。夜明けは近いということか。


ゲスト / Guest

  • 髙木勇樹 / Yuki Takagi

    日本 / Japan

    元農林水産事務次官 / the former vice minister of the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries

研究テーマ:戦後70年 語る・問う

研究会回数:4

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