2017年08月31日 15:00 〜 16:00 9階会見場
沈浩(Shen Hao)中国翻翻動漫集団 社長 会見

会見メモ

中国の翻翻動漫社と集英社は共同で日本の人気マンガを中国で出版、ネット配信を行ってきた。「中国人の原作を日本でアニメ化して日中で配信するなど、新しい形が生まれている」(沈さん)「以前は海賊版に悩まされていたが、最近は課金された正規版をスマホで読む人が急増。中国のアニメ制作の質も急速に向上している」(足立さん)

 

司会 小川記代子 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)

 

壇上左から足立聡史氏、沈浩氏


会見リポート

マンガ・アニメを通じて拡大する日中文化交流

八牧 浩行 (時事通信出身)

日中間が最も緊迫化した2012年9月の尖閣諸島国有化と大規模抗議デモ。その直後に訪れた際、中国繁華街のショーウインドーに「ドラえもん」の大きなぬいぐるみが飾られていて驚いたことがあったが、今中国の若者は、街角や地下鉄車内で日本のマンガやアニメを、スマホで楽しんでいる。かつてはもっぱら単行本や雑誌の出版やテレビだったが、デジタル配信時代に突入してさらに開花した。スマホ決済による超キャッシュレス社会とあわせ、この分野の急速な進展と若者世代の底知れぬパワーを見せつけられる思いだった。

 

沈社長は日本留学後の2009年にマンガ・アニメ関連会社「翻翻動漫集団」を創業。大手出版社の集英社と提携し、『ワンピース』『NARUTO』など同社の人気マンガの中国での出版、ネット配信を行っている。検閲チェック基準は「エロ・グロ・ナンセンスで日本と同じ。強いて日本との違いを挙げれば幽霊(オカルト扱い?)ぐらいかな」と笑う。タテ長のスマホの画面に合わせて「タテ型スクロールのできるマンガ」が好まれ、日本のマンガ業界も対応を迫られている。

 

集英社の足立課長は「中国ではネット環境が日本より整っており、若者はネットを通じて漫画を楽しんでいる」と中国ビジネスの急拡大に満足そう。「以前は海賊版に悩まされたが、課金された正規版をスマホで読む人が急増。電子決済が後押ししている」と明かした。「同じ東洋人なので、欧米のマンガやアニメより親近感があるようだ」とも語る。2大ネット企業の、テンセントとバイドゥが正規品の権利を持つようになったら、海賊版が減少。権利者が取り締まる「中国特有の現象」という解説も面白かった。

 

中国では精神的な欲求を充足するエンターテインメントに目が向き、文化産業が勃興している。アリババが大手動画配信サービス「優酷土豆」を買収するなど中国アニメ市場が活発化。アニメやゲームを愛好する人口は2億~3億人に達し、若者人口が減少する日本の業界にとっては救世主となる。

 

中国のマンガ・アニメ制作の質も急速に向上。中国人の原作を日本でアニメ化して日中で配信するなど、新しい形態も生まれている。翻翻動漫集団が運営し、集英社がサポートするマンガコンクール「新星杯」をきっかけにデビューした中国人マンガ家7人の作品が日本の雑誌やデジタル媒体に掲載され、うち1作品は「週刊少年ジャンプ」(集英社)で初の海外作家オリジナル作品としてデビュー。「中国のトキワ荘(手塚治虫らが暮らした豊島区のアパート)」と呼ばれる「中国漫画家村」が各地に出現、多くの志望者が切磋琢磨しているという。

 

両氏は口をそろえ「マンガやアニメを通じて日中文化交流がさらに進み、友好促進に寄与するだろう」と期待した。


ゲスト / Guest

  • 沈浩 / Shen Hao

    中国 / China

    杭州翻翻動漫集団社長 / Hangzhou FanFan Comic Group, President

  • 足立聡史 / Satoshi Adachi

    日本 / Japan

    集英社ライツ事業部海外事業課課長 / SHUEISHA Inc. International Business Division, Senior Manager

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