2016年10月20日 14:00 〜 15:00 9階会見場
「LGBTと社会」③上川あや 世田谷区議

会見メモ

性的マイノリティであることを公表して当選した初の公選議員。「トイレも性別にとらわれる必要はない。超高齢化社会なら、介助する人がトイレの選択で困らないユニバーサル・デザインを広げたい」。LGBTが差別されない世の中に向け「小さな声社会に届け」と訴えた。
司会 宮田一雄 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)


会見リポート

小さな声 大きな変化

宮田 一雄 (産経新聞特別記者)

性的少数者であることを明らかにして議員活動を続ける上川あやさんが、「わが国の最先端を行く」と自負する世田谷区の性的少数者支援策について総括的な説明を行った。

 

最初のスライドには「生まれたときは男の子でした」と書かれていた。そして、2枚目は「現在、女性議員として働いています」。上川さんは心と体の性が一致しないトランスジェンダーとして「性同一性障害」の治療を受け、男性から女性へと性別を変更した。

 

2003年5月の世田谷区議選に「性同一性障害」であることを公表して立候補し、初当選。それ以前はOLだったが、住民票の性別も、年金手帳の性別も、健康保険の性別も変えられない、そんな状態を何とか変えたかったからだ。

 

区議当選の2カ月後には性同一性障害特例法が成立し、上川さん自身も2005年に戸籍上の性別変更が認められた。現在は世田谷区議4期目。トランスジェンダーだけでなく、広く性的少数者に、人としての平等の権利が認められるよう議員活動を続けてきた。より正確には、それは上川さんの議員活動の一部なのだが、会見では性的少数者支援策にしぼってお話をしていただいた。

 

例えば、行政書類を点検すると、書類の性別欄は6割が不要だったことが分かり、区に削除を求めた。2007年には世田谷区男女参画共同プランに「性的少数者への理解促進」が明記されるようになった。世田谷区立男女共同参画センターでは毎年、セクシャルマイノリティー理解講座が開かれるようになった。

 

性的マイノリティー(性的少数者)への相談窓口が開設され、電話相談も始まった。学校では「性同一障害」「性的指向」が人権課題として教科学習に取り入れられるようになった。

 

平成26年度から10年間の世田谷区基本計画にも「多様性の尊重」として「女性や子ども、高齢者、障害者、外国人、性的マイノリティー等を理由に差別されることなく…」という文言が盛り込まれた。

 

そして昨年11月には、渋谷区と同時に世田谷区でも同性パートナーシップ制度が開始された。

 

こうした施策の実現は、区の担当者の意識改革を促してきた上川さんの当事者議員としての尽力に負うところが大きい。区内の同性カップルを訪ね、要望書としてその声を区に伝えたこともある。

 

アパートを借りようとしたら不動産業者から、男同士には貸さないが、管理費を倍払えば大家に掛け合ってやると言われ、6年間払い続けた…。

 

互いに異性と離婚した後、子連れで一緒に暮らしているが、子どもがいじめに遭わないよう、周囲には親戚と言っている…。

 

パートナーが倒れて入院したとき、病室にすんなり入れずとても悲しい思いをした。いざというとき、家族として扱ってもらえないことが一番の不安…。

 

ゲストブックには「小さな声 社会に届け」というメッセージをいただいた。区議として13年、その小さな声の集積が「最先端」の自負につながっている。


ゲスト / Guest

  • 上川あや / Aya Kamikawa

    日本 / Japan

    世田谷区議 / a member of the Setagaya ward assembly

研究テーマ:LGBTと社会

研究会回数:3

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