2016年10月06日 14:00 〜 15:30 9階会見場
シリーズ企画「北朝鮮の核とミサイル」② 倉田秀也 防衛大学校教授

会見メモ

朝鮮半島政治が専門。北朝鮮の相次ぐミサイル発射は「軍事技術的には合理性あり。核戦争の敷居は下がっている」。一方、日本の防衛は「サッカーで言えばMFとGKがいるだけ」と警告。「日米韓と北朝鮮とのテクノロジー競争。これに負けたら撃たれる」
司会 山本勇二 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

攻撃目標は韓国と米軍だが

北朝鮮の核とミサイル」のシリーズ企画。最初の2回は東アジアの安保情勢と軍事技術を中心にした。

 

北朝鮮は中、長距離弾道ミサイルから潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)まで多発しているが、金田氏は性能と開発レベルを詳しく説明した。

 

攻撃目標は米韓両軍であり、日本を最初に狙うことはないが、暴発の可能性は否定できない。監視と迎撃には、イージス艦と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の組み合わせをさらに増強、高度化する必要がある。ただ、技術開発には時間がかかり、防衛費の問題もあるから、日米韓の協力体制を強化するのが当面の課題になる。

 

日本国民は災害やテロへの意識はあるが、「万一、ミサイルが飛来した時はどこに避難するかなど、日常生活に密着した防衛意識も持つべきだ」と訴えた。

 

北朝鮮は目前にある脅威だが、より規模の大きな脅威は中国だと述べ、国際法を無視した海洋進出に外交、安保両面での備えを強調した。

 

倉田氏は、北朝鮮は米国と戦争をする考えはないが、韓国を攻撃し市民を殺傷しようとする意識は常にあると分析した。

 

SLBM開発は、核による先制攻撃を受けても第2撃で報復する能力を持つためだ。今後注目すべきはミサイルの大気圏再突入実験であり、落下後に弾頭を回収するため、海上ではなく領土内で発射する可能性もある。ミサイル発射を最初に捕捉するのは米偵察衛星と韓国軍のレーダーで、 迎撃態勢まで考えれば、日米韓の連携強化が緊急の課題だと述べた。

 

東アジアに軍拡競争が起きるのでは、という質問には、「日米韓の軍事テクノロジーが北朝鮮よりはるかに上回っていると誇示して、強い姿勢で抑止していく考えだ。国民の安全を守るには、決して負けられない競争になる」と話した。

 

元海上自衛隊海将と、現職の防衛大教授。それぞれ「話せないこともある」と言い、日本の迎撃ミサイルの阻止率などには明言を避けた。それでも、「今そこにある危機」を明確に説明してくれた。

 

企画委員 東京新聞論説委員
山本 勇二

 

(※この会見リポートは、9月30日開催の同シリーズ1回目、金田秀昭・岡崎研究所理事会見との統合版です)


ゲスト / Guest

  • 倉田秀也 / Hideya Kurata

    日本 / Japan

    防衛大学校教授 / Professor, National Defense Academy

研究テーマ:北朝鮮の核とミサイル

研究会回数:2

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