2016年09月29日 14:00 〜 15:00 9階会見場
「TPP」⑥ 大江博 TPP首席交渉官

会見メモ

TPP交渉は、2013年から首席交渉官代理、首席交渉官として最前線に立ってきた。「米側とは何十回も罵り合い、怒鳴り合いになったが、置かれた状況ではベストの内容になった」と自己採点。米大統領選で主要2候補がTPP反対だが、「要求があっても安倍政権で再交渉に応じることはない」と言い切った。
TPP政府対策本部
司会 軽部謙介 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

臨時国会での早期承認 強く促す

黒田 理 (北海道新聞社東京支社論説委員)

環太平洋経済連携協定(TPP)を承認するかどうか、臨時国会の焦点の一つである。

 

参加各国との交渉を担ってきた大江博氏は「100点ではないが、日本が置かれた状況を考えるとベストの内容だ。ぜひ臨時国会で通してほしい」と強く訴えた。

 

米大統領選の候補者たちはTPP承認に否定的な考えを示しており、「日本が審議を急ぐ必要はない」との声もある。

 

しかし、大江氏は「日本が米国の判断を待つと、他の多くの国で議会審議がストップする」と反論する。オバマ大統領の任期中に、米議会が協定を承認する可能性も低くなる。「日本が(TPP漂流の)引き金を引くようなことはすべきではない」というのだ。

 

「怒鳴り合い、罵倒し合い、何度、席を蹴ったことか」。合意までの2年以上、米国などとの間で激しいやりとりが繰り広げられた。

 

それというのも「途上国でもない日本が、『例外なき関税撤廃』の例外にしてもらう交渉だった」からだという。

 

だが、農業関係者を中心に不安、反発が根強くある。他国に比べて関税撤廃率を低く抑えたというが、国会決議で関税維持を求めた重要農産物の中にも関税が撤廃される品目が少なくない。

 

特に酪農は、牛肉の関税引き下げや、乳製品の一部関税撤廃など打撃が大きい。

 

大江氏も「農家が不安に思っているのは否定しない」と認める。ただ、その不安は必ずしも「合意内容ゆえではない」と指摘し、酪農の苦境は牛海綿状脳症(BSE)などに端を発するとの見方を示した。

 

理由はどうあれ、不安を持つ人は多い。そうであれば国会は承認ありきでなく、議論を尽くすべきだと思う。論戦が始まる前から、強行採決を公言する議員がいるのがなんとも気がかりである。


ゲスト / Guest

  • 大江博 / Hiroshi Oe

    日本 / Japan

    TPP首席交渉官 / Ambassador Chief Negotiator for the TPP

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