2016年09月30日 14:30 〜 15:45 10階ホール
平野俊夫 量子科学技術研究開発機構(QST)理事長 会見

会見メモ

QSTは、放射線医学総合研究所と日本原子力開発機構の量子ビーム部門、核融合部門を統合して今年4月に発足した。免疫学が専門の平野俊夫理事長(前大阪大総長)が、放射線防護や被ばく医療など研究開発全体について話した。「量子メスとか量子医学医療とか新しく名前をつけた。そうすると組織に一体感が出てまとまる」
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(量研機構)
司会 服部尚 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

多様性の橋渡し役に ロマンと使命感

服部 尚 (企画委員 朝日新聞社編集委員)

「量子科学技術研究開発機構」と聞いて、すぐに内容がわかる人は少ないだろう。役所の人にも通称「QST」という呼び名の方がピンとくるらしい。今年4月に、放射線医学総合研究所と、日本原子力研究開発機構の量子科学ビーム研究部門と核融合エネルギー研究部門が合体して生まれた新組織だ。

 

誕生から間もないことに加えて、接点の乏しい研究分野の組織が集まり、「ばらばら感が伴う」といった声もあるそうだ。確かに「あー、そんなことをするところか」と、大づかみで組織を理解することがなかなか難しいと感じる。

 

そんな組織を紹介する話の冒頭、平野俊夫理事長は、人類の歴史を振り返り「21世紀は、言語や人、慣習、宗教など文化の多様性が爆発した時代である」と位置づける話から始めた。時には障壁や対立の要因となる多様性に橋渡しをするのは、芸術やスポーツと同様に、学問や科学技術を担うと訴えた。ばらばらにみえる機構での今後のマネジメントは、まさにその挑戦の連続であるようだ。

 

人体内の複雑なネットワークを扱う免疫学で国際的な業績を挙げてきた研究者らしい視点に思えた。今は、各部門の特性を生かして、病気の治療や診断に役立てる「量子生命科学」という分野での研究に力を入れているという。

 

記帳では「夢を行い 考えて祈る」と書いた。機構誕生のきっかけは、高速増殖原型炉「もんじゅ」の点検漏れなどの問題から、日本原子力機構の改革に迫られたことだった。それだけに、職員に新しい組織での使命感を根付かせるためには、ロマンを語ることが大切だ。言葉の随所にそんな思いをにじませた。


ゲスト / Guest

  • 平野俊夫 / Toshio Hirano

    日本 / Japan

    量子科学技術研究開発機構(QST)理事長 / President, National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology

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