2016年09月26日 11:00 〜 12:00 10階ホール
オーウェン・マーフィー アイルランド金融サービス・電子政府・公的調達担当相 会見

会見メモ

2011年に下院議員に当選。34歳。今年5月から現職。「アイルランドと国際金融サービス:Brexit後の欧州における挑戦と機会」をテーマに話し、記者の質問に答えた。

司会 福本容子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

EUで最も若い国 新鮮な発想で発展めざす

中井 良則 (日本記者クラブ顧問)

34歳の若い大臣が日本を訪れたのは「ヨーロッパでの投資や事業拡大を考えている日本企業の拠点候補としてアイルランドを宣伝することです」という。こんなに経済が低迷し活力も衰えた高齢化ニッポン。そのおカネに期待する国がまだヨーロッパにある。自信を失い悲観論が横行する日本だが、世界から見れば、あり余るカネの行き場がない豊かな国に映るらしい。

 

そのアイルランドは日本とは大違いだ。「人口の40%が29歳以下で、EUの中で平均年齢が最も低い国です」。EUで最も若い国とは知らなかった。

 

この国は大ブリテン島のすぐ隣に位置したために早くから英国の植民地となった。自分たちのことばを奪われ、経済収奪された。19世紀のジャガイモ飢饉で食い詰めた人たちは大西洋を渡り米国に移り住んだ苦い歴史がある。460万人の小国は欧州統合に積極的に参加することで、飛躍の機会をつかんだ。ダブリンはロンドンを飛び越し、ブリュッセルとつながったわけだ。一人当たりGDPは5万1350ドルでEU2位、世界9位。日本より1万8000ドルも多い(OECD、2015年)。

 

アイルランドにとって英国のEU離脱はどう影響するのか。

 

「EUおよびユーロ圏で唯一、英語を話す国として、5億人を超えるEU市場にバリアフリーのアクセスを提供できます」

 

いわれてみれば当たり前だが、英国が抜ければEUで英語が公用語の国はアイルランドとなる。(ただ、人口42万人のマルタも公用語は英語なので「唯一」と断定するのは正確ではない)

 

アイルランド語(ゲール語)が第一公用語で英語は第二公用語の位置づけだが、市民の日常会話は英語だ。大英帝国の植民地支配が残した英語は、この島国がグローバリズム競争を勝ち抜く大事な資産となった。

 

さらに付け加えた。「教育システムは世界のトップ10に入り、30~34歳の50%以上が大卒学位を持つ。EUで最も高い割合です」。人材こそ最大の売り物ということだろう。

 

担当大臣なので国際金融サービスの充実や成長も強く訴えた。ロンドンやフランクフルトにとって代わってダブリンが欧州の金融センターとなる日が来るかもしれない。その点を聞かれると「ヨーロッパのどこと比べても可能性がある」と上手に答えた。

 

若い世代が責任あるポストを任され、新鮮な発想で国を動かす。

 

「英国の民主的プロセスにより導き出された(EU離脱という)結果をアイルランドは受け入れ尊重する」「EU離脱後、英国が開かれた力強い存在となることを期待している」。

 

その言い方に、かつての宗主国英国を対等に扱い、さらにはいつか追い抜けるという勢いを感じた。


ゲスト / Guest

  • オーウェン・マーフィー / Eoghan Murphy

    アイルランド / Ireland

    金融サービス・電子政府・公的調達担当相 / Minister of State at the Departments of Finance and Public Expenditure and Reform with Special Responsibility for Financial Services, eGovernment and Public Procurement

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